千の夜をこえて-2- (ページ9)

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ep.9 ページ9

堂安side

通夜も葬式も終わってだいぶ落ち着いたけど、家に帰ってもおかんがいないことが寂しかった

これからは兄貴の家に住むことになった

…でも……本音を言うと……神奈川に戻りたい

とも思う

でも、今さら戻ったとこでやしみんなに合わせる顔もない

Aにも颯一郎がおるし……

-スポーツクラブ-

監督「律！大丈夫やったか？」

「はい。迷惑かけてすみません」

監督「何言ってんねん。迷惑なんかかかっとらんわ。……あ、そうや！ほらこれ。彼女が会いに来て渡しといてもらえますか？って」

「Aが…？何でここを？」

監督「お兄ちゃんに聞いた言うてたで？律が昔ここでサッカーしてたって言ってたから何か知ってるかなと思って来たって。

あの日ずーーっと待ってたんやけどな……。お母さんが亡くなったって連絡来て律は家に帰ったって言ったら、家教えてください！って言って教えたら飛び出して行ったわ……」

「……じゃあ、俺の家に？」

監督「……行ったけど夏鈴がおったんやろ……それ見て帰ったって」

「…………」

夏鈴「……」

〜

練習が終わって貰ったものを開けると俺がずっと欲しいって言ってた財布だった

そこには

＂遅くなってごめんね。誕生日おめでとう＂

とメッセージが付いていた

本当だったら一緒に過ごせたはずなのに

夏鈴「律」

「おぉ」

夏鈴「だいぶ落ち着いた？」

「うん。ごめんな色々と」

夏鈴「何言ってんの笑律に助けが必要になったら私はいつでも動くから」

「笑笑」

夏鈴「……律さ、この間神奈川行った時どうだった？彼女さんに会えたの？」

「…会えたっていうか街中で見た。男といるところ」

夏鈴「新しい彼氏？」

「彼氏かはわからんけど俺と同じクラスだった人で、いつの間にか仲良くなってた」

夏鈴「……で？律はそれ見てどう思ったの？まだ好き？それとも……」

「…分かんねぇ。正直神奈川に行ってから女とは遊びでしか付き合ってなかったし、あんなに本気で好きって思えたのは久しぶりやったから」

初恋の夏鈴以来だった

夏鈴「……忘れなよ。律の気持ちも考えない人の事なんて」

夏鈴が何でこんな事言うのかなんとなく俺は分かっていた

「…」