モーンガータ (ページ5)

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「おはよう。」

拓弥と合流してから、前を歩く女の子を見つけ声をかけた。

「Aさん、おはよう。」

全く聞こえている気配がない。そういえば、昨日見かけたときイヤホンをしていた。もしかして、それで聞こえていないのではないだろうか。

肩をポンポンと叩くと案の定、Aさんはイヤホンを外して立ち止まり振り返った。

「おはよう、Aさん。」

『…小笠原くん。』

「海でいいよ。小笠原って言いづらいでしょ。こっちは拓弥。草川拓弥。」

「うっす。」

「ちゃんとした挨拶をしろ。」

拓弥を小突いていると、頭を下げてその場を立ち去ろうとするAさんの姿が見えて思わず腕をグッと握った。

「ちょ、ちょっと待って！Aさん、一緒に行こう。」

『…腕。』

「ごめん…。」

咄嗟のことで握ってしまった腕をパッと離した。

「Aさんはさ、

『やめて。』

え…？」

話しかけようとすると、突然話を遮られた。やはり、ちょっと馴れ馴れしかっただろうか。

『苗字で呼ぶのやめて。』

「ごめん…。じゃあ、Aちゃん？」

『それで良い。』

そう言い残して、すぐに立ち去ってしまった。凄みに負けた。何となく、また追いかけるのは気が引けて少し時間を置いてから歩き出す。

「なんでそんなにAちゃんのこと気になるの？」

学校に到着した頃にはすでにAちゃんは自分の席にいて、俺はそのまま拓弥の席へと向かった。

「いや、そういうわけじゃ…。」

「気になってるじゃん。そうじゃなかったら、あんな風に話しかけないでしょ普通。」

AA

あのニセモノの笑顔の裏に何かを抱えてる気がして、気になっているのは確かだ。

「ちげぇよ、ただの興味本位。」