モーンガータ (ページ16)

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「でも、そういうAちゃんもそうでしょ？」

『わたしは…』

「Aちゃんも見た目が邪魔してるよ。」

小さいときから周囲の目は、クールで何を考えているのか分からない子。何があってもへこたれない、そんな風に思われてきた。

芯がしっかりしてるように見える、そう何度も言われてきた。

だから、わたしも同じように振る舞った。

「Aちゃんに初めて会ったとき、かっこいいな～って思ったんだよね。だけど、どこか俺と同じ匂いがした。」

『匂い…？』

「うん、自分を偽ってる感じが俺と似てた。」

『自分の弱いところ見せるのも、自分をさらけ出すのも難しいね。』

腰掛けていた石のうえからぴょんっと飛び降りて目の前に広がる大海原めがけて走り出した海くんは波打ち際ぎりぎりで止まった。

それと同時にすぅっと大きく息を吸い込んだ。

「人を見た目で判断するな～～～！！！！」

突然大声で叫んだ海くんにぎょっとする。

「…はぁ、すっきりした。Aちゃんも、おいで。」

すっと手を差し伸べてくる海くんの手を握って、石の上からぴょんと飛び降りた。

同じようにすぅっと息を吸い込んで、私も同じように叫んだ。

随分と気持ちが晴れた気がする。

月明かりが水面にキラキラと輝いて、一筋の道が出来た。

『この月明かりの道、歩けたら良いのにね。』

「すぐ消えちゃうよ。」

『現実的なこと言わないでよ。』

「ごめん。」

『不安定だし、いつなくなるか分からないし、道踏み外しそうになった時、海くん助けてね。』

「それは、お互い様。俺のこともAちゃんが助けて。」

『うん。』

繋いでいた手を海くんに引っ張られて気がつけば腕の中。背中に手を回して、体いっぱいで海くんを感じられるように私もギュッと抱き着いた。

家に着いた頃には、もうすでに日付が変わっていて、これでもかってぐらいお父さんに怒られた。

八つ当たりじゃない怒りを向けられたのは、久しぶりだったかもしれない。

必要とされている感じがして、涙が溢れた。