モーンガータ (ページ15)

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あれからどれぐらいの距離を電車で走ったのだろうか。見慣れた景色なんて一つもない。乗客も俺たち二人以外、点々と座っているだけだ。

携帯を開くと拓弥からの大量のメッセージ。言わずに来てしまった。親からの着信にも目を通す。無断欠席をしていることで学校から連絡でも来たんだろう。

現実から逃れたくて携帯の電源を切った。

繋がれた左手の先にはAちゃん。じっと窓の外を見つめている。

Aちゃんに初めて出会ったとき、凛としたその姿がやけに格好よく見えて初めは憧れのような存在で見ていた。

だけど、どこか影がありそうなところに俺は勝手に仲間意識を持ったのかもしれない。

Aちゃんならきっと、俺の痛みを分かってくれる。そんな気がした。

『…ん？』

ギュッと握った左手に少し力が入って、Aちゃんが振り返る。

「…勝手に連れ出して、ごめん。」

『ううん。』

会話は長くは続かない。電車の揺れとのどかな風景。そんな空気にただただ落ち着いた。

いつのまにか二人とも眠っていて、駅員さんにポンポンと肩を叩かれて目が覚めた。

気付けば終点。

プシューと音を立てて閉まる電車のドアを背に駅のホームへと降り立った。

周りには何もない。背の高いビルも人で溢れかえった交差点も。

『なんか、違う世界に来たみたいだね。』

「そうだな。」

まだ手はしっかりと繋がれたまま。

どちらからともなく、当てもないまま歩き始めた。

少し歩くと目の前に広がる大海原。

ポツンと砂浜の上に寂しそうに置かれている大きな石の上に二人で腰掛けた。

「寒くない？」

『うん、大丈夫。』

「…なに？」

突然フッと笑い出したAちゃんに問いかける。

『いや、立場が逆転したな～って思って。』

「ははっ…今は俺の方が小さいか。」

『海くんはさ、見た目が邪魔してる。』

「邪魔？」

『だって、陽気に見えるんだもん。だから、そうやって振る舞わなくちゃって思うんでしょ？』

図星だ。昔から着丈に振る舞うことだけは得意だった。だけどそれが辛かった。