． ページ35
「…あ、いや今帰るところ。…忘れ物？」
『うん、そう。これから、海くんに勉強教えてもらうんだけど、教科書忘れちゃって。』
ピクッとその名前に反応して、沸騰しそうなやかんみたいにふるふると震えてきた。
「…付き合ってるの？」
『え？』
「海と、付き合ってるの？」
じりじりとAに近付きながら、とうとう壁際まで追い詰めた。
『あの、祐基…？ちょ、ちょっと、近い…』
俺の胸を押しながら、身長差的に上目遣いになるAが堪らなく可愛くて。
「質問に答えて。海と付き合ってるの？」
『付き合ってない！』
「本当？」
『本当だから！離れて！』
トンッと胸を押されて素直に離れた。そのまま頭を抱えてその場に座り込んだ。
『…なに？どうしたの？』
座り込んだ俺に合わせるようにAも一緒になってしゃがんでくれた。
それがやけに嬉しかった。
『…祐基？』
「行くな。」
膝を抱えて顔を埋め、震える声で言葉を発する俺はとても弱い。
「行くな、海のところ。Aが海と一緒にいるところ見ると腹が立つんだよ。」
『…なんで？』
落ち込んでいるときに優しく声をかけて頭を撫でてくれるこの仕草は小さい時から、ずっと変わらない。
「今まで、ずっと俺がいちばんAの側にいたのに何で今になって海なんだよ。」
ふふっと笑った声が聞こえてきて、思わず顔を上げた。
『何それ、やきもち？』
ぐっと両掌で両頬を挟まれ、Aとがっちりと目が合う。
『今までもこれからも、私のいちばんは祐基だよ。』
「…え。」
『はい、帰ろ。あ、でも、海くんに勉強教えてもらわないといけないから祐基も一緒に。暇でしょ？』
「え、ちょっとねぇ、いちばんってどういう…」
『はい、はい、帰るよ。』
引っ張るように握られた手に大慌てで荷物を抱えて教室を後にした。
合流した海には、なんでお前もいるんだっていうような目で見られたけどしっかりAの隣はキープした。
なんたって俺はAのいちばんだから。
end
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 193人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mami100810(プロフ) - まさん» おぉ〜！ヤバい…めっちゃキュンキュンしちゃいました(照)もし、良ければ続編をリクエストしても大丈夫ですか？最終的にはカレカノになって欲しいです！ (2019年8月7日 1時) (
レス) id: 80e4a31d29 (このIDを非表示/違反報告)
ま(プロフ) - mami100810さん» リクエストありがとうございます。更新お待たせしました。要望通りになっているか分かりませんが、気に入って頂けると嬉しいです。 (2019年8月3日 0時) (レス) id: 36e2c90037 (このIDを非表示/違反報告)
mami100810(プロフ) - カイさんが転校生(無気力で気だるげな女の子)に恋をするお話が見てみたいです！ (2019年7月28日 1時) (レス) id: 80e4a31d29 (このIDを非表示/違反報告)
ま(プロフ) - mami100810さん» 更新お待たせしてしまってすみません。なんだか書いていてよく分からなくなってしまったのですが、気に入って頂けると嬉しいです。 (2019年3月31日 9時) (レス) id: 36e2c90037 (このIDを非表示/違反報告)
mami100810(プロフ) - まさん» 更新楽しみにしてます！ (2019年3月26日 23時) (レス) id: 80e4a31d29 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ま | 作成日時：2018年11月2日 5時
