ペトリコール (ページ13)

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「拓弥さんと会えたみたいだね。祐基さんと一緒に行っちゃったと思ったら、そのまま帰ってこないんだもん。」

『うん、次もまた会える約束もした。』

「良かったじゃん。」

『…寂しかった？…あ！もしかして佑亮、ヤキモチ焼いた！？』

「いや！え！ち、違うよ！…でも、Aが嬉しそうで僕も嬉しい。」

いつものようにバイトの迎えに来てくれた佑亮と帰路に就く。公園の近くで突然佑亮が立ち止まった。

『どうしたの、佑亮。』

「でも、なんでさ、拓弥さんは雨の日しか会えないの？」

『…なんでだろう。』

拓弥さん、今度の質問決めました。…明日、雨…降りますように。

そんな期待も虚しく、雨の降らない日が続いた。雲一つない空を見上げては溜息が出る。

普通なら、逆なのに。あんなに嫌で仕方のなかった雨の日が、今では待ち遠しいぐらい。

だから、朝起きて雨が降っていたら嬉しさで飛び跳ねた。

佑亮に先に行くと連絡を入れて、傘を片手に家を出た。

公園に着くと拓弥さんはまだいなかった。先に東屋の椅子に腰掛け、遠くを眺めてみる。

いつも拓弥さんは何を見ているのだろう。ツーンと鼻を掠める雨の匂いを思い切り吸い込んだ。なんだか懐かしい匂いがする。

「Aちゃん、おはよう。」

『拓弥さん！おはようございます！』

突然声をかけられ、驚いた私は思い切り立ち上がった。

「今日は、早いね。」

『はい！雨が降っていたのが嬉しくて、つい。』

拓弥さんは、静かに椅子に腰掛け口を開いた。

「はい、じゃあ。今日の質問は？」

『…拓弥さんは、どうして雨の日ここにいるんですか？』

「この前の質問から随分すっ飛んだね。」

目を細め、優しい顔で微笑みかけてくれる拓弥さん。綺麗だと見惚れていたあの表情がすぐ近くにある。