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『笑わないでください!真面目なんです。』
「ははっ、真面目か。で?何が知りたい?俺のこと。」
知りたいとは言ったものの、何を聞いていいのか分からず静かな時が流れた。
「…ないんかい。」
『…あります。』
「じゃあ、何?」
『…家族構成…とか?』
ポカンと口を開けて、私のことを見てくる拓弥さん。ばちっと目が合った瞬間、目をくしゃっとさせ手を叩きながら笑い始めた。
「何?そんなこと?父、母、俺、弟の4人家族。ちなみに家はすぐそこ。公園の西側。Aちゃんは?」
『私も!家すぐそこなんです。公園の東側。意外とすぐ近くにいたんですね。』
「そうだな。狭いね、世間って。」
この公園を挟んで通学区域が変わるため、きっと拓弥さんに今の今まで会うことがなかったんだ。
「今日は、ここまで。次の質問は、また会った時に。」
おもむろに腰掛けていた席から立ち上がり、傘をパッと開いた。
「送ってく。帰ろう。」
もう少し、一緒にいたかった。まだ話し足りない。でも、緊張して話をしていたときに比べると大きく前進。
それに、また会ったとき。また会えたときの約束まで出来た。
拓弥さんの後に続いて、私も傘を開いて追いかけた。
隣に並んで歩いているときはお互い無言。でも、それが心地よかった。
『ここまでで大丈夫です。…次は、いつ会えますか?』
「前に言ったじゃん。天気次第。」
そういえば、拓弥さんがここにいる日は必ず雨が降っている日だった。
『………雨の日、ですか?』
「そう、雨の日。じゃあ。次の質問考えとけよ。」
『…はい。ありがとうございます。また、雨の日に…』
去っていく拓弥さんの背中が見えなくなるまで見送った。頬の緩みが止まらない。こんな幸せな気分で過ごした雨の日はきっと初めてだろう。
早く次の雨の日が来ないだろうか。
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作者名:ま | 作成日時:2018年9月18日 8時