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「…拓弥がいるから?」




『え、いや…』




いつもふざけているからか、初めて見た祐基くんの真剣な表情。




「会いたいんでしょ、拓弥に。」




『会いたい…ですけど、でも…』




「やっぱ、拓弥には勝てないかぁ。薄々勘付いてはいたけど…俺は、ずっとAちゃんのファンでいる!Aちゃんなら、拓弥のこと変えてくれる気がする。」




『…どういうことですか?』




「…たぶん、拓弥いまもここにいるよ。行ってきなよ。佑亮くんたちには俺から話しとく。」




祐基くんに背中を押されて、勢いのままあの公園へと行くことになってしまった。会いに行って良いのだろうか…と葛藤しながら。




まだ雨脚が弱まらない中を、バシャバシャと音を立てながら走った。



息を切らしてたどり着いたいつもの公園。まだ東屋は柵で見えない。



肩を上下に揺らしながら息を整えて、軽く深呼吸をして一歩ずつ歩を進めた。




『…いた。』



切なげに遠くを見つめる綺麗な拓弥さんの横顔に息を飲んだ。初めて見たときの衝撃と同じ。



なんで来たんだと一蹴されるかもしれないと恐る恐る近寄った。



ゆっくりと近付いてくる影に驚いて拓弥さんがこっちを振り向く。



「Aちゃん…え、なんで、文化祭は?」




『…抜けてきました。拓弥さんに会いたくて。』




ほとんど話したこともないような人に会いたくてと言われても、気持ち悪いだけ。




『あ、えっと、あの…ごめんさい。忘れてください。』




「Aちゃんってさ、…いつも突然だね。突然現れて、突然喋り出して、突然静かになる。…雨みたい。」




『雨…ですか?』




「ここ、座りなよ。」




誘導された隣の位置。心臓のドキドキがすぐ近くの拓弥さんに聞こえないか心配だった。




「せっかく、しおりくれたのに行かなくてごめんね。しおりくれた時も愛想悪くてごめん。あの時、ちょっとイライラしてて。」




『良いんです。用事あったんですよね。気にしてないので、大丈夫です。』




「Aちゃんはさ、…なんで俺に話しかけるの?」




そういえば、なぜなんだろうか。なぜこんなにも拓弥さんのことが気になって、なぜこんにも会いたいと思うのだろうか。




『知りたいんです。拓弥さんのこと。』



「…俺のこと?なんで?」



『…分かりません。でも、知りたいんです。』



「やっぱり、Aちゃん面白いわ。」



フッと笑った拓弥さんの表情に一瞬で緊張が解けた。

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作者名: | 作成日時:2018年9月18日 8時

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