ペトリコール (ページ17)

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天気雨は幸福の前兆だっていうけれど、夢で見た天気雨は私の気持ちを表していたのかもしれない。

晴れているのに雨。狐の嫁入りは本来なら縁起が良いはず。

拓弥くんと親しくなってきた分、拓弥くんに対する感情が激しくうごめいている。

晴れの日が続いてあれから数日が経った頃、朝起きてカーテンを開けるとどんよりとした雲に大粒の雨。

『よしっ。』

また佑亮に連絡を入れてから家を出る。今日はどんな話をしようか考えながら、足取り軽く公園へと向かった。

いつものごとく東屋にいる彼。

…と、隣に座る女の子。拓弥くんと同じ制服。

拓弥くんと同じぐらい綺麗な横顔だった。

仲良く2人で笑い合っている。あんなに自然な笑顔、見たことがなかった。

サーっという雨の音がうるさい。

寒い。

いつもは感じたことがなかったけれど、足元がぐちゃぐちゃで歩きにくい。

やっぱり……雨は嫌いだ。

踵を返して学校へと向かった。こんなに朝早く学校に向かうのは、きっと初めて。

案の定、一番乗りだった。

教室の電気も付けず、席に着いてすぐ顔を伏せた。

拓弥くんは、あんなに魅力的な人なんだ。彼女の一人や二人………いるに決まってる。

「…あれ、A？」

パッと教室の電気がつき、明るくなった。

『…あ、佑亮…。おはよう。』

「拓弥さんのとこ…行くんじゃなかったの…？」

『あぁ…えっと、拓弥くん用事あるみたいで…。』

「そっか…そうだ。今日、迎えに行くのちょっと遅くなる。」

『うん、わかった。』

今は、佑亮がこうやって話してくれることで自分の心が壊れるのを防いでいてくれる気がする。

この日を境に、雨が降っていても公園へ行くことはなくなった。

東屋を視界に入れないように、さっと走り過ぎるだけ。

現実を受け入れるのが怖いから。