I’m into you (ページ1)

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距離
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"いらっしゃいませ〜お好きな席へどうぞ"

ちょうど深夜の12時を回った頃

行きつけのバーへ立ち寄る。

20代前半でこんな小洒落たカフェに女性1人で立ち寄る人が何人いるだろうか。

「いつもので」

なんて店員さんに注文してしまう始末。

"お待たせしました、ギムレットでございます。"

そっと置かれる綺麗なグラスに目を奪われてしまう。

何度このお酒を口にすればいいのだろうか。

そっと口をつけるとライムの味わいが口に広がる。

ああこれだ。

目を瞑るとあの頃の記憶が今のように蘇る。

一緒に訪れた場所。

このパン屋さんドライブした時に見つけたんだよな。とか。

夜の公園で泣いてたら飛んできてくれたっけ。とか。

離れ離れになることはわかってた。

その頃は会えないくらい我慢出来る。大丈夫、やっていける。

そう思っていたのに。

今では会えない時間が長く感じてしまって

息苦しく感じてきてしまった。

そんな私も惨めな自分に耐えきれず週に１回のペースで

このバーでお酒に頼って生きてきた。

もうそろそろ飲み終わるだろうと思っていた頃、

店内のドアが開きベルがチリンと来客を知らせた。

そんなことに特に見向きもせず

グッと最後の一口を飲み干すと1人の男性が隣に腰掛けた。

『A、久しぶり。』

咄嗟に隣に目を移すと愛おしくて堪らなかった彼の姿があった。