revenger―６ ページ6
.
「あっもう18時！私行くから戸締りよろしくね！」
田舎独特の、18時を告げる季節の歌が遠くから聞こえた。
それを合図にささっと身支度を整えてキャンパスとイーゼルを片付ける。
「はーい、気を付けてね！」
気の抜けるような明るいお別れの言葉にも慣れて部室を後にした。
.
正直、フクシュウヤと聞いても未だにピンときていない。
復讐している場面を見ていないことが大きいだろう。
しかし見たくもないし、この知ってるけど嘘のような状態が一番いいように思う。
.
急いで玄関に向かうと、下駄箱に寄りかかってスマホを構う彼の姿。私に気付いて「おつかれ」と笑った。
「お待たせ」
私の手を取る彼の手は暖かい。
.
「今日は何してたの？」
「図書室にいたよ」
なるほど、だから暖かいのかと納得して握り返した。
福田が言っていたように私は隣のクラスの小笠原海と付き合っている。
優しくて頭も良くて格好良くて、私にはもったいないくらいの彼氏。
一目惚れだといって告白されたのだが、私も海の事が気になっていたため二つ返事で付き合うことになった。
.
「絵はどう？完成しそう？」
「んーぼちぼち……かな」
正直のところ、ギリギリのライン。
毎日遅くまで取り組めばなんてことはないと思う。
それでも、毎日私を待ってくれる海に対して申し訳なくて。
海は何時間でも待つから気にしないでいいよと優しく言ってくれるけど、それが本心でないことを知っている。
待つことに対してではなく、会えないことに対して、だ。
だから私は絵に対しても海に対してもギリギリで過ごしている。
.
「あの……さ、土曜日ちょっと時間つくれないかな？」
「土曜日？どうしたの？」
白い息にまじって小さい声で、
「映画のチケットがあるんだけどよかったらどうかなって」
「えっと……」
.
ちらっと顔を見て気付いてしまった。
そんな垂れ下がった眉をみてしまったら、
学校に来て絵を進めようと思っていたとは言えなくて。
.
「うん！行こう！」
.
私は不安な気持ちに気付かないフリをした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 369人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぷらむね(プロフ) - ぴこさん» コメントありがとうございます、完結いたしました！ (2018年12月24日 9時) (
レス) id: f05577cece (このIDを非表示/違反報告)
ぷらむね(プロフ) - りみさん» 久しぶりです。長い時間お待たせしてしまいましたが、なんとか終わりました！支えてくださり、ありがとうございました (2018年12月24日 9時) (レス) id: f05577cece (このIDを非表示/違反報告)
ぷらむね(プロフ) - りかさん» 最後の最後は少しハッピーになれたかな、、と思います！いかがでしたでしょうか？ (2018年12月24日 9時) (レス) id: f05577cece (このIDを非表示/違反報告)
ぷらむね(プロフ) - さーちゃんまんさん» おかげさまで完結致しました。ありがとうございました！ (2018年12月24日 9時) (レス) id: f05577cece (このIDを非表示/違反報告)
ぴこ(プロフ) - また続きみたいです！！ (2018年8月18日 3時) (レス) id: 2258431a87 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：plum ne
| 作成日時：2017年12月16日 12時
