20 ページ20
.
「これ松尾から」
二日休んだらすっかり良くなった。
が、学校帰りに家に寄った匠海が口にしたその名前にまた熱が出そうになる。
なんで匠海と、……松尾君が?
恐る恐る箱を見ると、のど飴だった。
裏面には、油性ペンで何かが書いてある。
.
.
“俺にも弁当下さい”
.
.
翌日、昼休みのチャイムが鳴ったと同時にクラスを出ようとした私を友人が呼び止める。
私の手には二つの弁当カバン。
「ごめん、イケメンコンテスト一人だけまだ撮れてなくて!そこだけ!そこだけついてきて!」
早く行きたかったのに、思いつつここまで懇願するなら仕方ないと渋々付き合うことにした。
「用事あるからすぐ行くからね私」
「おっけーおっけー!
三年教室に一人で行くの辛くて」
.
三年教室?
「小笠原先輩なんだけど」
小笠原先輩?
「あの、友さん?」
.
もう時すでに遅し、三年生の教室。
ここまで来てあっと気付いた友人は、不器用に笑って誤魔化した。
「小笠原先輩、イケメンコンテストの写真撮らせて下さい」
嫌々レフ板を持つ私に気付いて微笑む小笠原先輩。「久しぶりじゃん」「……どうも」とだけの会話をしてあっというまに撮影は終わった。
「ありがとうございます!」
とお礼を言う友人。私もほっと胸を撫で下ろしてさっさと三年生の教室を後にした。……小笠原先輩の視線を感じながらも。
その足で向かうは、非常階段。
近づくたびに胸が高鳴るが、その姿を見つけて一番高鳴った時に勇気を出して声を掛けた。
「まままま、まづおくん!ごめんね!もうたべた?これつぐってきたの!でももう昼休みおわる!」
慌てて弁当カバンを渡す。
見ていた本をパタリと閉じて、
「たべる」
お互いガラガラの風邪声で。
そういえば、とあの時のことを思い出すけれど至って普通の松尾君。
あれは松尾君が熱にうなされてたから起きた事故だったのかもしれない。それか嫌がらせで気が済んだんだきっと、と判断して忘れることにした。
.
.
バクダンおにぎりがお弁当になっただけ。
それだけのことだけど、何だか特別に感じた。
.
1055人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yumi(プロフ) - 腹黒タカシくん良すぎます!!更新待ってます! (4月30日 23時) (レス) id: 28b0b9cda3 (このIDを非表示/違反報告)
5 - 続きが気になります!! (2020年4月24日 1時) (レス) id: e2f7b4b683 (このIDを非表示/違反報告)
あ - もう更新はなさらないのでしょうか?( ; ; ) (2020年2月5日 4時) (レス) id: 69e88fbea1 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 続きが楽しみです!更新楽しみにしてます〜(^ ^) (2019年1月16日 19時) (レス) id: 7620beece4 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - すごく面白かったので更新楽しみにしてます! (2018年12月24日 12時) (レス) id: 1ea4876c06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:plum ne | 作成日時:2016年11月3日 23時