君の心臓の音【Dr.STONE】3.5 (ページ47)

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「羽京さん…」

トクトクと鳴るAの心音の心地よさも合間って、いつもと違う声に敏感に耳が反応してしまう。

何今の可愛い声…

ふわふわの綿が耳の周りをうろつく様なぐったさが耳をさらに敏感にさせる。

恋人と2人っきりの薄暗い静かな空間で何も想像しない男は多分いない。

仕事の手伝いをしに来たのにこのままでは変な気を起こしそうだ。

「…」

今Aの顔を見てしまったらいろいろ我慢できない気がする。
どうしたの？といつも通り返事をしながら英文に目を通し、意識を勉強に集中させようとするが、Aに袖を掴まれる。

Aが自分から診察以外で誰かに触れるような光景は滅多と見た事がない。

「ッーーー…」

少なくともこんな男を誘う様な触り方をしてるのを見たのは初めてだ。

無意識でしてるのか…それにしてもAからはあまり触れられた事はない。

掴まれる手に向けていた顔をAに向けると、きゅっと唇を噛んで緊張した表情をしながらも、上目遣いで甘える様に僕をジッと見つめていた。

えっ…やっぱり…誘われてる？

そう勘違いされても文句は言えない表情をしてるAに困惑する。

抱きしめられただけで意識をぶっ飛ばすほどの恋愛未経験者がそんな事をしてくるだろうか…ましてや恥ずかしがり屋の内気なAだ。

自分が意識しすぎてそう見えているだけなのでは…いやでも…明らかに心音が…いつもと違う。

緊張からか心音をだんだん早くさせ、それを自分でも確かめる様にもう片方の手を心臓の上にAは乗せる。

『キスしたい』

幻聴まで聴こえてしまいペンを置いて僕の袖を掴むAの手に手を重ねてしまう。

「そんな目で見て…」

手を握ったらAは恥ずかしくて逃げ回ると思っていたが…逃げるどころがグッとキスしやすい様に体を近づけてくるので正直焦る。

「沢山キスされても知らないよ」

カマをかけるように言ったが、Aは顔の近さに少し顔を赤くする程度で…覚悟は変わらないみたいだ。

Aの瞳に自分が写ってるのが見え余計に緊張してしまう。

「本当に知らないよ」

何も言わないAにスッと軽く触れる程度でキスをしてみる。

積極的に求めてはきたが、緊張はしてたのか唇は力が入っていて少し硬く、キスが終わると閉じていた目をパチッと開ける。

「………」

どう言う感情なのか…Aは意外とキスをしたのに反応が薄く内心良くなかったのか焦ってしまう。