君の心臓の音【Dr.STONE】3.5 (ページ25)

今日:42 hit、昨日:8 hit、合計:10,963 hit

25 ページ25

「これは私の独り言だと思ってください」
「？」

空になったグラスをフランソワさんが取るとほんとに独り言の様にグラスを拭きながら話す。

「龍水様がA様と羽京様のご関係をとても心配されております」
「！！」

トンとグラスを置くと珍しくフランソワさんが悲しい顔をする。

「龍水様は口にはしてませんが…執事として長くおそばにいると目線だけで分かるのです。『自分のアドバイスのせいでお二人が不仲になっているのではないか』と…」

龍水さんは全く悪くない…ボクが悪いのに…
嫌われてしまったのも全部…

「…すみません」
「A様がよろしければ…羽京様とこの場でゆっくりとお二人で話されてはいかがですか」
「えっ…この場で？？」

今から呼びに行かれる！？のかと思ったが…

「目線は私に向けたままでいてください」
「？」
「羽京様が外にいらっしゃいます」
「！？」

目線はそのままだと言われたのに、目を向けそうになるほど驚いてしまう。

「なんで…外に…」
「羽京様も…何かA様に話したい事があるのかと思います」

「ボクに話したいことなんて…羽京さんは…ボクに隣にいてほしくないと…思うから…」
「何故そう思われるのですか？」
「そう…言われたから…多分ボクのこと…」

あぁ…ダメだな…羽京さんの事になるとすぐ泣きそうになってしまう。

「私の知る羽京様はA様をとても気にかけておられます」

「それは多分…羽京さんが〝優しい〟から…そう見えるだけです…」

ボクだって初めはそう思った…
だけど…羽京さんはみんなに優しい人で…
ボクが好きだから優しくしてくれるわけじゃないんだ…
それを勘違いして…

「羽京様は人一倍お優しい方ですが、私から見るにA様には特別お優しいです」
「そんなの…」
「先程のスモモもですが、A様のためにと他にも沢山いろんな食材を私に届けては美味しい何か作ってあげて欲しいと今朝も言われました」
「えっ…こんなに…」

たくさんの山菜や果物がカウンターを埋め尽くす。

「食に関心を抱けない子だけど、食べる事は好きな子だからと…好んで食べていた物があれば教えてほしいと言われました」
「……初めて知りました」

並べられた食材を見てどれだけ羽京さんが重い荷物を持って帰って来たかがよく分かる。