君の心臓の音【Dr.STONE】3.5 (ページ16)

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カゴいっぱいのスモモをフランソワさんは出すと、これは全部羽京さんがボクのために取ってきてくれた物だ言われる。

「こんなに沢山…でも時期は違うのにどこから…」

今は秋だ…スモモの収穫は春頃で…

「私も不思議に思いまして調理をしながら調べていたのですが、桃に近い果物のようです。3000年も時が経てばこうした新しい果物が生まれていても不思議ではございません」

たしかに…3000年も経てば品種の一つや二つあったもおかしくない。

「お味はスモモに近いので、ご安心を」
「あ、ありがとうございます。いただきます」

沢山泣いて渇いていたからか…ヤギのミルクとガムシロップの甘味が体に染みる。
そしてスモモの香りが口に広がり羽京さんの事を思い出してまた泣きそうになる。

「とても飲みやすくて…今までで飲んだジュースの中で一番美味しいです」

笑って泣くのを必死に誤魔化す。
早く治療室に戻りたいな…堪えるのはあまり得意ではない。

「羽京様がまたお痩せになっていたと心配されておりましたよ」

羽京さんの話はもうしてほしくない…
悲しくなる…
羽京さんの優しさが…今は凄く辛い…
このスモモもその心配も…ただの仲間としてで特別な意味はない。

羽京さんの事でいつもより食が通らなくて…
最近あんまり食べてないから…痩せたのは確かだ。

「スモモのお料理を中心にお出しいたしますので、いつでもお越しくださいませ、お忙しければお持ちいたします」
「そ、そんな…みんなと同じもので大丈夫です」
「他にお好きな物やお嫌いなものがございましたら何なりとお申し付けください」

スモモが口に入るたびに羽京さんの事を思い出して…
柔らかい果肉の入った飲み物なのに…
石を飲み込んでいるみたいに痛くて苦しくて…

「っ…」

もう耐えられない…そう思った時にはポロポロと涙がまた溢れていた。

「お口に合いませんでしたか！？」
「いえっ…凄く美味しいですっ…ごめんなさい…」

食べながら泣きだすボクにフランソワさんが心配してキッチンから出てきてしまう。

「羽京さんからだって…思ったら…嬉しいくて…でも…羽京さんはっ…」

フランソワさんはボクの食べかけのお皿をサッと引いて、あたためたヤギのミルクを出してくれる。

「…ありがとうございます」

人肌より少しあたたかいヤギのミルクを頂き少し落ち着いたボクにフランソワさんは先ほどまでじっくりコトコトと煮込んでいた鍋にそっと蓋を閉める。