【2j3j】通暁リベラル【ヤンデレ】

後光の軽蔑/ G.Tjr ページ6

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「離縁を望みます。」
「理由訊かせて貰って良い？」

逢引で別れる直前に彼女から淡々とそう告げられた。合縁して一年。心当たりが無い。彼女は如何にも言い辛そうであったので、道の端に移動して訳を訊く事にした。離縁を望むとは全く勇気のいる事であるからして、その覚悟に至る迄の過ちを問い質そうという魂胆である。

「はっきり申し上げましょう。」
「う、うん？」

彼女の瞳は苦々しい決意に満ちている。嗚呼。泣いてしまうのだと思った。彼女の眉目が歪み、表情が曇るのは何人であれど許せなかった。誰に何を吹き込まれたのだろう。純粋な彼女を唆したのは何奴か。そうで無ければ此れ程可笑しな事も言うまいて。彼女の為に心血注いでいるのだから。

「私は藤士郎さんに釣り合っておりません。」
「なんでそう思ったの？」

諦観の瞳の中に確かな息吹を感じる。頑固で思い込みが激しい彼女が一所懸命口下手ながら僕に思いを伝えようとする姿がいじらしかった。落ち着かせる為に態と緩慢に呼吸をしつつ彼女の言葉を噛み締める。彼女が僕に釣り合わないとそう主張している。

「私は粗暴な女と思います。」
「そう？」

粗暴な訳が無い。今だって御髪から甘い香りがしている。男が嗅いだら一溜りもない様な大人の女性の花々しい馨しさだ。洗髪料も彼女に合う一流の物を選んでいるし、洗髪も、その後の手入れの何もかもを僕が世話しているのだし、控え目な性格も寧ろ淑やかで朝霧の中の淑女を思わせる。

「藤士郎さんは聡明で博識で顔貌も良く、更には神使をお勤めでいらっしゃいます。しかし、私はしがない戦神の末裔であり、今や殆どその力は残っておりません。桜魔皇国でせっせと野菜を作り、奉納し、僅かな人と談笑して死にゆくのが精々です。美しい藤士郎さんと釣り合う者には御座いません。藤士郎さん程の方なら引く手数多ですから。」

「Aはそれで良いの？」

僕は良くない。絶対に嫌だ。ぷるぷるに潤った唇には僕が買い揃えた彼女の肌の色に映えるグロスがぬるり、とその果実の曲線を魅せている。抑もその美しい唇を作っているのも僕だ。リップスクラブもリップパックもしてあげてるし、それでも乾燥が酷い彼女の為に毎晩リップエッセンス迄塗り込んであげている。

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