曇天橋の上で/ S.Akn ページ29
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「何で？」
「まゆゆがこの間、幸せ過ぎて辛いって。」
自らからが世界に繋がる男がそう言うか。彼はGペンから這い出た現実の様に完璧に鼻目を歪めて見せた。空閑が繋がる。私は速い現実に戻らねばならぬ。妄想に接続され過ぎると現実の己が死んでしまうから。多彩の瞳が隣で緩慢に橋の縁に肘を付いた。彼は死を纏う唇で軽やかに息吹を謳う。
「そう。」
「俺にはそういう感覚は分からんけど、世界からちょっとずつズレてく気持ちは分かる。そうなると少し寂しいよな。また自分が置いてイカレる様な気がして、ヤダ。だったら世界に飛び込んで死んでしまいたくなるかもしれん。けど、その前に出来る事もあるでしょ？ほら、俺に頼るとか。」
うるおいに満ちた瞳は夜の中でただただ猫の様に光っていた。夜の中でそれはちっとも正気を保って居らず、寧ろ溢れた生命力で死で満ちた心の器を零して洗い流そうとしている様にも見えた。生命力は心地良い。死は温かい。では、彼は？極彩色が瞬いて、永続の瞳が私の決意をぶちり、と切った。身体をねばらかに絡み付くこれは。
「少し飲んで忘れよ。俺、最悪タクシー代出すから。」
「うん、有難う。」
いつの間にか開けられた酒缶からは甘い酎ハイの香り。差し出されたその感触が心地良くて。軽く縁を眺めてから唇に添わせる。アルミの感触が前歯に当たり、舌を焼く酒精が流れ込む。微かに苦味を感じるのは金属の風味だろうか。何だか身体が温かくて幸せだ。
「ね、A。」
「何、明那？」
瞳が束縛を呼んでいた。いつもを演じているが、全く笑顔は無い。美しい瞳が夜に澱んでゆく。均一な曇天の夜が彼の表情を塗り潰してゆく。私は今、誰と話しているのか。もしくは今が、彼自身なのだろうか。ぬったりとした湿度を孕んだ風が顔に張り付いた。艶裏とした彼の瞳ばかりが爛々と光っている。
「好きだよ。」
「え、」
背中に手が添えられた。しっとりと馴染む体温に毒気を抜かれた瞬間、強い力で押された。身体が宙を舞う。透明な液体が缶から僅かに零れた。露が落ちる瞬間に缶の口から放り出されたのは白い球。これ、さっき買った睡眠薬じゃ、眼球を震わせて彼の方を見ると艶のある唇が弧を描いていた。
「これで少しは報われたかな。」
×慈悲、忠誠、奉仕。三者三様。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - イズミさん» お初お目にかからせて頂きます。ご愛顧賜れて何よりで御座います。リクエスト承りました。緩慢に連ねておりますので3日〜1週間程お時間頂戴する事、ご承知おきくださいませ。 (2022年11月29日 21時) (
レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ(プロフ) - 初コメ失礼致します。鵯様の作品の何とも言えない美しさの虜になった者です。リクエストでskngさんで束縛タイプのヤンデレは可能でしょうか…？その他のシチュエーション等はお任せ致します。 (2022年11月29日 18時) (レス) id: 58fc769308 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 煙さん» 此方こそ大変有難うございました。そういう表現は旗付きにならない様にする事が出来ませんでした。無念。妄想で補ってくださいませ。大変申し訳ない。微力ながらも精進して参ります。よろしくお願いします。 (2022年11月20日 23時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
煙 - リクエスト書いてくださりありがとうございます…！実物の彼はヤンデレチックな素振りをあまり見せないので難しいかなぁと思っていたのですが、見事に解釈一致で助かりました。これからも貴方様の美しい小説を楽しみにしております！ (2022年11月20日 22時) (レス) id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
煙 - いつも主様の作品楽しく読ませていただいております。リクエストなのですが、夢主が少し病み気質で手首に傷をつけたりしてしまうタイプで、夢主大好きなkgmさんがおそろいにしたくて真似しちゃうみたいなお話をお願いしたいです。 (2022年11月16日 17時) (レス) @page1 id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
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