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あなたへ/ S.Lulu ページ22

×ちょっと重い友情



「Aちゃんはどう死にたい?」
「……もう、死んでたりして。」

目も醒めるような明るい青の瞳が現実を組み立てる様に訊いて来た。薫衣草の香りが辺り一面に漂っている。近くに咲いた加密列からぽたり、と朝露が溢れた。迷迭香が隣から囁き掛けて来る。美しい花庭の中心で私は仰向けになってぼんやりとした天を拝んでいた。

「ふふふ。Aちゃんは面白いね。」
「意識的な死があればそうかもしれないけど。」

日常から遠く離れた空間で日常に思いを馳せる。様々な様相が浮かんでは消えての繰り返し。その中で一目置かれた彼女。いつも活躍する彼女は多くの人間から慕われていた。その多くの人間から私を隣に置いてくれたのは光栄な事だった。

何も人生的幸福が無い私に神が贈物として憐れんだ故なのかもしれない。誰もが惚れ込んでしまうような圧倒的な輝きを放つ彼女の側を許されるなんて。眩い彼女の美しさに私は何度も救われる。華やかな乙女の気遣いは例え彼女が取り繕った演出だとしても天鵞絨の様に滑らかな感情は確かに心に染み入るのである。

「聞き方を変えるね。」
「良いよ。」

密着する様な声。彼女は私の髪を撫でながら可愛い顔で思案する。けれど次の質問は胸をぐしゃぐしゃに押し潰す様な物だった。檸檬の金の果汁を彷彿とさせる様な痺れる質問。翠玉の霧が肺に溜まってゆく。三鞭酒がばちばちと弾ける様な電撃が胸の中心を射る。愛の爆弾が炸裂する様だった。

「幸せが終わる気分はどう?」
「そんなの幸せに決まってる。」

桃赤がじゅわり、と弾けて霧に溶ける様に。霧が降る天上が少しずつオパールに色付いている。宝石の瞳が私を覗き込んでにこりと笑う。罠に掛かったのだと思った。もう此処から抜け出す事は出来ない。大きな宝石の瞳は残酷な静謐を語る。

「そっか。じゃあ、るるがAを終わらせてあげる。」
「うん。良いよ。このまま終わりたい。」

目尻が微かに色付いた。私の為に涙してくれるのだ、優しい友である。抜け感のある睫毛はオパールの霧の中で金に染まっていた。明るく大きな瞳。私はその大空に殺されたい。唇から力強い牙が此方に剥いた。野生的な獣の捕食の様子に私は畏怖でなく、心地良さを感じていた。

あなたへ/ S.Lulu→←軍官の休日/ Olv.E


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  • 健康運: ★★★★★
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設定タグ:2j3j , ヤンデレ , 短編集   
作品ジャンル:タレント
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鵯(ひよどり)(プロフ) - イズミさん» お初お目にかからせて頂きます。ご愛顧賜れて何よりで御座います。リクエスト承りました。緩慢に連ねておりますので3日〜1週間程お時間頂戴する事、ご承知おきくださいませ。 (2022年11月29日 21時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ(プロフ) - 初コメ失礼致します。鵯様の作品の何とも言えない美しさの虜になった者です。リクエストでskngさんで束縛タイプのヤンデレは可能でしょうか…?その他のシチュエーション等はお任せ致します。 (2022年11月29日 18時) (レス) id: 58fc769308 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 煙さん» 此方こそ大変有難うございました。そういう表現は旗付きにならない様にする事が出来ませんでした。無念。妄想で補ってくださいませ。大変申し訳ない。微力ながらも精進して参ります。よろしくお願いします。 (2022年11月20日 23時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエスト書いてくださりありがとうございます…!実物の彼はヤンデレチックな素振りをあまり見せないので難しいかなぁと思っていたのですが、見事に解釈一致で助かりました。これからも貴方様の美しい小説を楽しみにしております! (2022年11月20日 22時) (レス) id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
- いつも主様の作品楽しく読ませていただいております。リクエストなのですが、夢主が少し病み気質で手首に傷をつけたりしてしまうタイプで、夢主大好きなkgmさんがおそろいにしたくて真似しちゃうみたいなお話をお願いしたいです。 (2022年11月16日 17時) (レス) @page1 id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2022年10月24日 19時

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