検索窓
今日:8 hit、昨日:16 hit、合計:49,692 hit

聡明に従え/ Myzm.X ページ16

×



朝焼けの様な影と光がマーブルした瞳が此方を向いていた。しっとりとした美貌は細やかな光か、ぬるりとした影を思わせる。彼は緩慢に対面の椅子の背凭れを引くとゆっくりと座った。濡羽の髪がさらり、と靡いて隙の無い観察者の瞳が眼前に座る。醒める直前の輝きに思わず吸い込まれてしまいそうだ。彼は左指を左耳に当てると耳朶に沿って撫でる。

「どーも。第二〇三隊情報技術部所属のまゆずみ……、まぁ、いいや。俺の識別個体名は『X』。エックスとかバツとかカイとかジュウ、ペケ、バッテン、変わった物だと接吻(キス)とか親愛を意味するラブ、って呼ばれてる。どーぞ好きに呼んで。俺はAと話す為に此処に来た。よろしく。」

その瞬間、濡羽から眩い程の青が眼前に齧り付いた。複雑な色合いの青だった。ただ、朝焼けに畝る波の様な青の輝きに瞳孔を焼かれた。彼は完全に手癖だった様で私が見惚れている様子に微かに面白そうに笑った。青と濡羽の境が金や緑や紫、白銀にちらちらと瞬いて見飽きる事がない。彼は軽く頭を右に傾けて青を見せてくれた。

「気になる、よね。」
「はい。ごめんなさい。」

横を向いたお陰で彼の睫毛の長さが強調される。睫毛の存在感がある訳ではない筈なのに軽く伏せるだけで耽美である。何だか彼の佇まいが神秘的で無意識に生唾を飲み込んだ。上品な色彩が此処に座っているだけで究極にエレガントだった。彼は頭を定位置に戻すと私を観察する。

「別に良いよ。なんか飲みたいものある?」
「え。特には……。」
「……バーボン。俺にバーボン持って来て。」
「黛所長、それは、」
「良いから!さっさと!持って来い!」
「Aは。Aは何飲みたい?」
「……スポーツドリンクください。」
「分かった。他には何がいるの?」
「チョコレート、食べたいです。」

彼は殺意を全く覗かせずに武人に拳銃を突き付けると灼熱から這い出た鬼の様な声で脅した。唐突の緊張感から放たれた私は気が抜けてしまった。彼は文官だが、私の敵だ。彼の思い通りにならなければ私もあの鬼に頭を撃ち抜かれてしまうのだろうか。此処にいる時点で私から死は遠ざからない。ただ先延ばしになるだけだ。

聡明に従え/ Myzm.X→←飼狗部屋に/ F.Mnt


  • 金 運: ★☆☆☆☆
  • 恋愛運: ★★★☆☆
  • 健康運: ★★★★★
  • 全体運: ★★★☆☆


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (78 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
191人がお気に入り
設定タグ:2j3j , ヤンデレ , 短編集   
作品ジャンル:タレント
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鵯(ひよどり)(プロフ) - イズミさん» お初お目にかからせて頂きます。ご愛顧賜れて何よりで御座います。リクエスト承りました。緩慢に連ねておりますので3日〜1週間程お時間頂戴する事、ご承知おきくださいませ。 (2022年11月29日 21時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ(プロフ) - 初コメ失礼致します。鵯様の作品の何とも言えない美しさの虜になった者です。リクエストでskngさんで束縛タイプのヤンデレは可能でしょうか…?その他のシチュエーション等はお任せ致します。 (2022年11月29日 18時) (レス) id: 58fc769308 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 煙さん» 此方こそ大変有難うございました。そういう表現は旗付きにならない様にする事が出来ませんでした。無念。妄想で補ってくださいませ。大変申し訳ない。微力ながらも精進して参ります。よろしくお願いします。 (2022年11月20日 23時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
- リクエスト書いてくださりありがとうございます…!実物の彼はヤンデレチックな素振りをあまり見せないので難しいかなぁと思っていたのですが、見事に解釈一致で助かりました。これからも貴方様の美しい小説を楽しみにしております! (2022年11月20日 22時) (レス) id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
- いつも主様の作品楽しく読ませていただいております。リクエストなのですが、夢主が少し病み気質で手首に傷をつけたりしてしまうタイプで、夢主大好きなkgmさんがおそろいにしたくて真似しちゃうみたいなお話をお願いしたいです。 (2022年11月16日 17時) (レス) @page1 id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2022年10月24日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。