麝香の口付け/ N.Kei ページ2
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口から辛い酒精を吐いた。漆塗の紅き盃の底には金で彫られた千寿菊がゆらゆら揺れている。隣の美しい男はウヰスキーをがらん、と傾けてぼう、と氷の底の琥珀を見詰めていた。引き結んだ唇は微かに孕んだ酒精に濡れている。見惚れる程に美しい男であった。乙女がぽ、と恋を色付かせる様な、くすみの中からぬるりと這い出た様な色男だ。
「御前様、また処分したな？」
「不満だった？」
春の曙にうつらうつらと飛ぶ、線の薄い蝶の翅の色の瞳が朗らかに此方を見詰めた。瞳の奥には罪悪感等微塵も無く、ただ赤子の機嫌を伺う様な色が浮かんでいる。
「否。腹立たしいだけよ。」
「あれはAには要らんものやった。」
長い付き合いになる。媚び付く程の鉄錆の臭いは未だ鼻腔より落ちる事はない。彼はだくだくとした灼熱を抱きながら微温いじっとりとした体温で語り掛けて来るのであった。するすると手から抜けてゆくのは気の所為か。私はどうもこの男が逃げている様な気になるのである。
「御前様がそう言うンならそうだろうな。」
「だったらもう忘れよ。」
塗りたくった紅が酒にふわり、と渦を巻いて溶ける。にこにこと笑って睫毛を伏せるこの男の獰猛さに頭を抱えたくなった。ぱちん、と硝子杯の中のロックが弾けて琥珀の海に沈んでゆく。私はこの男を愛おしいと思った。そうで無いならきっともう消されている。
彼は奇怪な男である。私の所有物を勝手に断りも無しに処分する。だからいつの間にか、何時何時は彼処にあったなあ、等と捏ねくり回したらとうの昔に処分されている。不便だなあ、と思いつつも執着皆無の私は数刻すれば探す意欲迄失くして仕舞うので困った事はない。だが、棄てたら一言欲しいと思うのは余りに怠惰か。
「そうでなくてな、」
「え、何？必要だったの？」
凄まじい色気である。精悍な顔貌が怒りに歪む。万人から愛される朗らかな笑顔は忽ちに消え失せ、酒気を纏う唇から頭ごとぐしゃり、と潰す様な冷淡な声を発した。肩に大きな手が食らい、彼がぎしりと私の身体を引き寄せる。彼が胸許に忍ばせたラズベリーがずっしりと鼻先に乗った。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - イズミさん» お初お目にかからせて頂きます。ご愛顧賜れて何よりで御座います。リクエスト承りました。緩慢に連ねておりますので3日〜1週間程お時間頂戴する事、ご承知おきくださいませ。 (2022年11月29日 21時) (
レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ(プロフ) - 初コメ失礼致します。鵯様の作品の何とも言えない美しさの虜になった者です。リクエストでskngさんで束縛タイプのヤンデレは可能でしょうか…？その他のシチュエーション等はお任せ致します。 (2022年11月29日 18時) (レス) id: 58fc769308 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - 煙さん» 此方こそ大変有難うございました。そういう表現は旗付きにならない様にする事が出来ませんでした。無念。妄想で補ってくださいませ。大変申し訳ない。微力ながらも精進して参ります。よろしくお願いします。 (2022年11月20日 23時) (レス) id: 9c96610dd1 (このIDを非表示/違反報告)
煙 - リクエスト書いてくださりありがとうございます…！実物の彼はヤンデレチックな素振りをあまり見せないので難しいかなぁと思っていたのですが、見事に解釈一致で助かりました。これからも貴方様の美しい小説を楽しみにしております！ (2022年11月20日 22時) (レス) id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
煙 - いつも主様の作品楽しく読ませていただいております。リクエストなのですが、夢主が少し病み気質で手首に傷をつけたりしてしまうタイプで、夢主大好きなkgmさんがおそろいにしたくて真似しちゃうみたいなお話をお願いしたいです。 (2022年11月16日 17時) (レス) @page1 id: 0f6ec90c76 (このIDを非表示/違反報告)
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