エルペインの憂鬱/ nisn ページ42
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「どうしたらAはお薬飲むんかなぁ。」
「……にぃさんが、ちゅー、してくれたら。」
くぐもってはいたが、確かに彼女はそう言った。未知的な驚愕で、思わず下を向くと顔を隠した彼女が耳を真っ赤に染めていた。血の気を失っていた青白い肌にそれは鮮烈に映えて、は、と何かに気づかされた。もしかしたら彼女は寝惚けて発言したのかもしれない。
「そういう冗談はなぁ、本当に好きな人に言うもんや。」
「Aは、にぃさんのこと、だいすき、だもん。」
ふへりという擬音がぴったり当て嵌まりそうな何とも間抜けな笑顔だった。目を細めてすりすりと頬擦りする姿はまるで小動物に思えた。そんな彼女があまりにも可愛らしくて苦しく無い程度に腕を大きく回して慰めてやる。苦痛に悩ませられながらも俺の温もりを享受している彼女の頭を撫でて、彼女の母親代わりの様に安心させてやる。彼女は暫く低い呻き声を上げていたが、疲労も相俟ってか次第に安らかな寝息へと変わっていた。腕の中の彼女が完全なる睡眠に移行したのを確認して、彼女を抱えたまま、立ち上がる。
「Aは、甘えんぼさんやなぁ。」
赤児の様に身を丸めて眠る彼女は俺の真意に気付いたりしない。彼女にとって、俺は男である前に兄なのだから。いつまで経っても彼女は俺を男として見ないし、俺が彼女の兄、という関係性は一生瓦解する事など有り得ない。もし、彼女が俺の邪な欲を知ったとしたら今の様に甘えてくれなくなるのではと思い、結句、俺は彼女の兄でいる事を選択し続けている。
「よしよし。今はいっぱい寝んねしような。起きたら俺がお薬、飲ませてやるから。」
無断で申し訳ないと思いながらも彼女の部屋に入室する。相当寒かったのだろう。絨毯にカーディガンが数着落ちており、クローゼットや箪笥は開け放されている。取り敢えず、それらを後回しにして、彼女をベッドに下ろしてやる。俺が離れて肌寒かったのか、眉間に皺を寄せて低い声で何やら呟いた。どうやら寝言の様だ。出来る限り腰に負担が掛からない様に薄いクッションを挟んでやる。後は掛布団と薄いブランケットをかけてやり、布団の中の冷気を抜いてやる。彼女は幸せそうにすやすやと寝息を立てていた。
「おやすみ、A。」
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- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
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