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桜纏し大和戦艦/ grppn ページ5

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「お父上、どうなされたか。」
「嗚呼、すまない。最近心労続きでな。」

結果的に言うと彼女の申請許可は降りた。何にせよ輸送艦如きでは向こうに潰されるのがオチだ。尚且つ戦力になるであろう最新式の18インチ砲を搭載するというのが決手となった。其処までの大規模計画、尚且つロンドンに悟られない様に事は秘密裏に進められた。

「なぁ、お父上様。死ぬのは、死ぬのは、哀しいなぁ。」
「嗚呼。」

彼女に仕える従者達の身辺は隅々まで調べ上げ、彼女が外に出る時は彼女が人目に触れない様に。厳重な秘匿の上に彼女の存在はあった。謂わば隠し子。私の愛娘であるのだからそれくらいの溺愛は許して欲しい。尚、陸軍大臣、関東司令官、首相、艦隊司令官に及ぶまで私の溺愛ぶりには引いていた。

「私は死ぬのだなぁ。思えば一番最初から見守ってくれ、私の名前を最初に呼んだのがお父上だった。」
「……もう喋るな。」

ごぶり、と吐くのは血ではなく潮。当然だ、彼女は戦艦なのだから。不慮の事故だとしか言いようが無い。彼女だってまさか待ち構えられているとは思わなかっただろう。カラダに空いた風穴にごぶこぶと海水が入り込んで行く。きついだろう、苦しいだろう。彼女はそれでも涙を流さずに微笑みを此方に向ける。美し過ぎる沖縄の海に彼女が埋没してゆく。嗚呼、あの日は桜が一等に綺麗だった。どこもかしこも花盛り。血を染み込ませた様に鮮烈な花弁が彼女の頬に落ちる幻影が見えた。

「なぁ、海軍大臣。私は天珠を全う出来て幸せだ。きっと私の死が次の世に平和を齎さんことを。」
「分かった、分かったから、もう。」

彼女はふわふわと微笑んだ。その笑顔がどうしようもなく透き通っていて。胸が苦しい。言葉に出来ない情動が込み上げて、思わず彼女に手を伸ばしてしまいそうになる。駄目だ。此処は彼女の神聖なる安らかな墓場なのだから。彼女は最後の力を振り絞る様に此方に視線を投げかけた。もうよせ、と言っても聞かない彼女の最期の言葉を聞き取る為に彼女の口の動きを注視する。紅を引いたかの様に紅い唇が緩慢に音を形作って開閉する。嗚呼、嗚呼!何故お前は最期にそう言い残すのか。これでは戦いに集中出来まいに。

「あ、い、し、て、い、る。」

大海に沈みし/ shorn→←桜纏し大和戦艦/ grppn


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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2019年9月19日 22時

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