閑散とした新年 ページ28
※年明け企画
朝っぱらから起き出して、カーテンをめくれば空が薄っすらと明るんでいた。雲が薄紫の妖精の羽のようなベールを纏っている。縁がだんだんと金粉を振りかけたように輝き始めた。神々しく、ある種の畏怖を持たせるその光景はこういった特別な日に見るからだろうか。
ご来光、所謂初日の出を拝もうと凍って閉じられた気温の中、白く息を吐き出してまで空を眺める。ゆっくりだんだんと待ち遠しかった太陽が姿を現し始める。
今日は珍しく霧がかけておらず、雲一つない美しい空だった。段々と太陽とともに色を変えていく空を見ながら、年が明けたことを実感してしまい、何処か郷愁に襲われる。憂いを洗い流した空にはいつの間にか昇り切った太陽が気丈な様子でそこに座っている。
それを一瞥し、新鮮な空気の中、伸びをした。さあ。今年最初の朝ごはんはうんと豪華だ。だっておせちだもの。しかも手巻き寿司とお味噌もセットで。本当はお雑煮が良かったのだろうが、餅が嫌いだから仕方ない。
キッチンというより、台所と形容した方がしっくりくる場所に立ってお鍋を取り出す。赤い鍋に水を張り、火にかけた。豆腐や油揚げ、葱を入れて軽く煮込んで味噌を溶かす。
漆塗りのお椀によそったとき、ふわりと味噌独特の甘いような塩っぽいような匂いが鼻腔を掠めた。そのまま食卓まで運び、冷蔵庫から手巻き寿司とおせちを取り出す。そうしてお気に入りのマグに煎茶を注げば、新年に似つかわしい朝食の完成だ。
生憎相手はいないため、新年早々から悲しく孤独である。買ってきた甘酒を立派な漆塗りの紅の盃に注ぎ、ぐいっと一飲み。炬燵でぬくぬくと暖をとりながら、浴衣を着崩す。どうせおめかしするのは明日なのだ。
今日くらいゆっくりと過ごしたとしてもバチは当たらないだろう。それにしても味噌汁の油揚げが薄い。好物なのに。もしゃもしゃと噛み砕けば揚げではなく、葱だった。じれったい。
大して美味くもないおせちとやたらに美味い酒を呷りながら、だらだらと寝正月を過ごす。新年挨拶など明日でよい。今はただ酒を飲んで寝よう。炬燵の温度が早速というように微睡みの中へと引きずり込んだ。次に目覚めるのは肌寒さによってだということは夢路の中では知る由もない。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯さん» リクエスト消化してくださりありがとうございます!流石鵯さま、期待以上のお話が読めて嬉しい限りです。良ければまたリクエストさせてくださいね。ありがとうございました! (2017年12月29日 19時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(プロフ) - (´・ω・`)Loveさん» 大丈夫ですよ。ありがとうございます。気長にお待ちくださいませ。 (2017年12月28日 21時) (レス) id: 10532b6a12 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯のさえずりというページは消されたみたいですけど、リクエストってまだ受け付けてますか?もし大丈夫でしたら飴の出てくるほのぼのとしたお話が読みたいです!……こ、こういうリクエストも平気ですか? (2017年12月28日 10時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鵯 | 作成日時:2017年12月20日 18時