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努力と無理は別物 ページ26

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女を逃したことに少しだけ落ち込んでいたようだが、先程の背負い投げで大分正気に戻ったのか飄々とした医者ヅラで対面の席に座った。正直、書類地獄から解放されたことに安堵したのか頭に睡魔が襲う。彼はお気に入りの細い黒縁の眼鏡を定位置に戻し、形だけの皺の波だらけの白衣を整え、正面から話しかけられる。

その両手には自分の名前が書かれたカルテとペン。どうやら真面目に診察してくれるらしい。

「どうしたの?眠いの?」

「ああ。ちょっとな。」


彼はカルテから目を離さないままにすらすらと何かを書いている。

「何徹目?」


さりげなく何もなく。端的に発された言葉に背筋が凍る。やはり腐っても医者か。人の些細な様子を見逃さずにいるようだ。食えない奴だと思いながらも返答する。

「4」

「はぁ?」


目を丸くし、素っ頓狂な声をあげるヤブ医者じみた本物の医者の声が脳奥に響き、彼を睨む。彼から一言だけすまなそうに謝られる。彼はそのあと目を鋭く尖らせた。その咎めるような視線は普段彼がしないもので、思わず怯んでしまう。彼の深海の底のような黒々とした目が狐のように細められる。

「ちょっと無理しすぎだよ。今日はここで絶対安静。」

「はあ。でも、仕事が。」


たんまりと溜まった書類の山を思い浮かべる。目の前のクズの分も多少は流れているのだが。

「少しは周りの人に頼らないと。ちょっとはみんなに任せても良いんだよ」

「でもな…」


尚も食い下がる自分に、呆れたように息を吐き目を伏せて立ち上がり、ペンとカルテを机に置く。少々芝居がかっているが、言っていることは正論だ。

そうしてカルテに挟んでいた一枚の紙を持ち上げ、彼は生真面目そうな顔で言った。

「ドクターストップ。大丈夫。君が頑張っているのは周りも知ってるから。誰も君を責めたりしないよ。」


彼の署名の入った書類は顔に似合わず流れるように達筆で押された印鑑に本物だと認識する。

その言葉に妙な安心感があって、自身を睡魔に委ねるのにそう時間はかからなかった。素直に閉じた瞼の裏に広がる闇の先を自分は知らない。

三十一日→←努力と無理は別物


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(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯さん» リクエスト消化してくださりありがとうございます!流石鵯さま、期待以上のお話が読めて嬉しい限りです。良ければまたリクエストさせてくださいね。ありがとうございました! (2017年12月29日 19時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - (´・ω・`)Loveさん» 大丈夫ですよ。ありがとうございます。気長にお待ちくださいませ。 (2017年12月28日 21時) (レス) id: 10532b6a12 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`)Love(プロフ) - 鵯のさえずりというページは消されたみたいですけど、リクエストってまだ受け付けてますか?もし大丈夫でしたら飴の出てくるほのぼのとしたお話が読みたいです!……こ、こういうリクエストも平気ですか? (2017年12月28日 10時) (レス) id: e516045fa3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月20日 18時

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