招き猫のアメジスト/ rbr ページ29
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「ロボロ、あなた、人間の骨を食べたことあって？」
「いえ、一度も。」
じゃり。大凡ワッフルを咀嚼しているとは思えない音だった。彼女は食事よりも死を咀嚼している。彼女が欲しいのは死に絶えた生命の残骸なのだ。人とは思えぬ程の残虐な思考。その崇高なお考えは常人である俺には到底理解出来るものでは無かった。彼女が命を嚥下する。
「そう。私も食べた事はないわ。だから気になるのよ。」
「何が、で御座いましょう。」
その質問が禁忌であることは分かっていたが、それでも尋ねずにはいられない。彼女を崇拝している眷族が主の願いを叶えないなどあってはならない。彼女の欲するままに。俺はあくまで彼女の指先。傀儡化した自己欲求の果てを頭蓋骨に満たして。
「人間の骨の味。献上して頂戴な。」
「……畏まりました。首を長くしてお待ちください。」
漸く彼女が此方を振り向いた。アメジストを彷彿とさせる双眸が妖しい熱を孕んで此方に微笑み掛ける。その様子は俺を新しい世界に誘う様な含みを持たせた招き猫の様だ。呼んでいるのは人でも幸福でも無く我欲に溺れた破滅。
「ええ。待っているわ。」
「それでは、失礼致します。」
彼女にそう告げて跪いていた姿勢から緩慢に立ち上がる。彼女はそんな俺の様子を暫く見詰めてから卓上で照明を浴びてきらきらと星の様な煌きを零すワッフルの入っていた紙袋に手を伸ばした。何故皿に盛り付けられているワッフルで無くて紙袋なのだろう。
「ロボロ、これを持ってお行きなさい。」
「有難う御座います。」
彼女は俺を呼び止めて上品な紙袋を此方に差し出した。美しい桜色に再度視線が吸い寄せられる。震えた声は微かな吐息を含んで彼女の聖域に溶ける。両手で施しを受け取り、再度彼女に最敬礼を送り、扉を潜った。ばくばくと震える鼓動とがくがくと笑う膝に冷汗を浮かべながらずるずると扉の前に屈み込んだ。
「今日もお綺麗やったわぁ。」
鮮烈なアメジストの双眸とその中に渦巻く狂気を思い出してぞわりと背筋に震えが走る。何と素敵な方なのだろう。はくはくと溢れる熱い吐息。治る事の無い
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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鵯(ひよどり)(プロフ) - ちゆさん» コメント賜り誠に恐縮でございます。お気に召された様で何よりと存じます。あの頃が懐かしく感じますね。こちらこそ長きに渡りご愛顧ありがとうございます。これからも細々と書き連ねて参りますので、是非続編にもお越しくださればと思います。 (2020年7月20日 16時) (
レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ちゆ(プロフ) - コメント失礼致します。措定エートスに感銘を受けました。鵯さまの文章の中でも特にお気に入りです。わたしの一番のお気に入りは陥穽モラトリアムなのですが、それと並ぶ程です。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。これからも陰ながら応援しております。 (2020年7月20日 14時) (レス) id: 6c19e7d8ad (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - ぴよりさん» リクエストありがとうございました。御眼鏡に適った様で何よりと存じます。またのご閲覧お待ち申し上げております。 (2020年5月30日 8時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
ぴより - 早速読ませていただきました！鵯さまの書かれる、美しさの中に闇を感じる文が本当に大好きです！ありがとうございました！ (2020年5月29日 23時) (レス) id: b50fafb894 (このIDを非表示/違反報告)
鵯(ひよどり)(プロフ) - ぴよりさん» ご愛顧いただきありがとうございます。前作のは中々難産でした為、今回も大幅に時間を取らせて頂きますことご理解ください。リクエスト承りました。気長にお待ち下さいませ。 (2020年5月28日 8時) (レス) id: 72d1a498da (このIDを非表示/違反報告)
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