5話 ページ6
慌ただしい1日が幕を閉じようとしている。
車の中で、左馬刻は赤から紺に変わろうとしている空を眺めた。
｢……チッ、ガキだな。
左馬刻、今日は家まで来なくていい。テメェん家帰れ｣
煙草を咥えながら言うAに、左馬刻は少し驚いた。
｢いいんすか?
でも、夕飯とか…｣
｢んなもん、適当なコンビニ飯で済ませる｣
｢分かりました……ありがとうございます｣
｢ん。おい、コイツん家まで行け。
住所は＿＿＿＿｣
Aなりの、優しさなのだろうか。
疲れた自分を見かねて帰してくれた…?
左馬刻はそこまで考えて、その思考を否定した。きっと気紛れだろう。そう思うことにした。
見慣れた家の前に車が止まり、左馬刻は降りる。
軽く挨拶をして去ろうと思ったが、それは止められた。
｢おい、犬なんだから飼い主が見えなくなるまで見届けろ。
それと、明日は学校行け｣
｢……学校は｣
｢行けよ。飼い主命令だ｣
｢…はい……｣
左馬刻が頷いたのを確認すると、Aは舎弟に車を出すよう言った。
車が見えなくなるまで、左馬刻は家の前にいた。その姿は、まさに従順な犬だ。
家に入ると、静かだった。
妹はまだ学校だろうか、母親は仕事だ。
父親は……
｢んだぁ?テメェ帰ってきたのか｣
最悪だ。と左馬刻は舌打ちをする。
それを目にした父は持っていた缶ビールを投げつけ、その胸ぐらを掴みあげた。
｢…っにすんだよ、クソ野郎ぉ!!｣
｢それが父親向かって言う言葉か?あﾞぁ!?｣
｢はっ!誰が父親だっ……ぐぁっ!!｣
腹に1発入れられ、力無くその場に蹲る。
父はケラケラと笑い、何度もうずくまっているその背に蹴りを入れた。
この光景は、今日見たなぁ…なんて場違いなことを考える。
左馬刻の意識がそこに無いのが分かったのか、それとも蹴ることに飽きたのか、父はリビングへと戻って行った。
そして新たに缶ビールを開ける音。
今日は酒があるから、比較的大人しい。
｢……は……痛てぇ…｣
玄関の前で座り込む。そこから動く気になれなかった。
けれど、スマホを取りだし母と妹に連絡を入れる。父がいるから遅めに帰ってくるように、そんな内容のものだ。
これで一先ずは大丈夫だろう。
あの二人が殴られることは、今日はないと信じたい。
左馬刻は重い体を動かし、自室へと向かった。
しかし、後にそれが間違いだったと後悔する。
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洸牙(プロフ) - はちゃめちゃに最高でした………。設定が神がかってる上に文章も素敵で 、本気で感動しました。左馬刻様が可哀想可愛いすぎて情緒めちゃくちゃです。この2人のその後とかを考えて、勝手に泣きそうになったりしてます。これからの作品も楽しみにしてます！ (2022年2月9日 23時) (
レス) id: 5f00eb5dfd (このIDを非表示/違反報告)
リト - とても面白かったです！！！！もう大好き！！他の作品も、見てみようと思います｡お疲れ様でした｡ (2021年12月21日 1時) (レス) @page45 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
ロト(プロフ) - スマホに変えてて慣れるのに時間かかってたらいつの間にか完結していた…だと…！？完結おめでとうございます！！読む度に語彙力が蒸発するくらい萌えてました。読み終わった今はクラッカーを100回くらいパァンってしたい気分です！！ (2020年4月30日 1時) (レス) id: f40d6209a3 (このIDを非表示/違反報告)
心春(プロフ) - 亜星可也さん» コメントありがとうございます。無事完結できて良かったです。そしてご心配して下さり、ありがとうございます。亜星可也様も、体調等お気をつけください。 (2020年4月6日 18時) (レス) id: 3f9e794f84 (このIDを非表示/違反報告)
亜星可也(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!もう本当に左馬刻が尊すぎて最高でした!!最近コロナが本当に危ないので感染しないように十分にお気を付けください!!! (2020年4月6日 18時) (レス) id: 430d859c05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：心春 | 作成日時：2020年2月18日 14時
