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｢久しぶりに見た、その顔｣
｢え…？｣
｢最近の智洋は、恨めしそうに俺らを見上げてばっかりやったから｣
｢…うん｣
そうやったよね。
この空が大好きやから綺麗に彩りたい。
この空が俺の自慢やから、風神様に見せたい。
そんな大事な気持ちを忘れて、要らないものを隙間に入れ込んでしまった。
｢俺、どうしたらええんかな…｣
｢好きって気持ち思い出したんやから、もうそれで十分やで。また飛べるようなるよ｣
｢……大毅、｣
｢ん？…ちょお待ってね｣
大毅から離れて震える足を、風がしっかり受け止めてくれた。
もう、大丈夫。上を向いても怖くない。
風の塊の上に自分の足でしっかりと立ち上がり、最後の支えであった繋いだ手も離される。
｢っ……｣
｢ふは、なんで泣くんよぉ？｣
｢ぅ、れし……って…｣
嬉しくて、楽しくて、切なくて、あったかい。
いっぱいいっぱい溢れるこの気持ちは何一つ言葉にならないけど、俺をぎゅうと抱きしめてくれた大毅には伝わっているんやと思う。
ボロボロと上空だけに降る雨を笑う姿は、お日様みたいや。
｢照史は、今すごく楽しいと思うよ｣
｢ん…｣
｢一番さみしいのは、智洋が名前呼んでくれへん事やって、知ってた？｣
｢…知らんかった｣
｢帰ったら呼んだげて、喜ぶから｣
そんな事にも気付けないなんて、俺はどんだけ余裕を無くしてたんやろう。
ゆっくり少しずつ地上に向かうと、朝の色を楽しそうに塗るみんなの姿。これも、随分久しぶりに見た気がする。
｢大毅、ありがと｣
あとちょっと、ジャンプで降りられるくらい低いとこに来てようやっと言えた。
きっとあのままじゃ、こんなにもはっきり俺の世界は開けなかったと思うから。
気付いてくれて、それを教えてくれて、ありがとう。
｢ええよ、こんくらい。智洋のためならなんて事ないわ｣
開けた世界の端々に見える大毅の俺に対する｢特別感｣に、俺の胸はきゅうきゅう言い続けるけど
｢…仲間想いで、かっこええね｣
まだもう少し、気付かないフリをしよう。
だって勘違いやったら恥ずかしいもん。
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作者名：杏子 | 作成日時：2017年12月30日 14時
