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あぁ、聞いてもらうっていいな。
自分の考えがこんなだったんだって知れる。
「お茶、もう一杯どう?」
「あ、いただきます!」
そういえばこの本屋さんはすごく古い作りなのに、しっかり整理整頓されてて綺麗や。ほこりっぽくもないし。
軽く見渡しただけで興味をひくものがこんなにあるのに、今の今まで全く見えていなかった。昨日も来たのになぁ。
「お掃除は、重岡さんがしてるんですか?」
「俺はあんまり店に出ないからなぁ。家族にやってもらってる」
「へぇ〜。すごく綺麗で羨ましいなぁ。僕の部屋いつも汚いから…」
「あははっ!なら今度智洋が店番してる時においで。掃除のコツ教えてもらうとええよ」
「智洋さん?」
「掃除とか整理整頓が大好きやねん。上手やで、見ての通り」
望も掃除が好きで、あ!流星もなかなか〜なんて、どんどん知らない名前が出てくるのに何故かスッと情景が浮かんで微笑ましい。
自然とそこに僕を入れてくれるのが嬉しくて、くすぐったくて。
少し溢れた涙は大笑いのせいにしておく事にした。
「わ!もうこんな時間…すみません、長々と」
「ええって。見てみぃ、お客さんなんてひっとりも来ぉへんかったろ?」
「え、あ…はぁ」
「あひゃひゃっ。やから気にせんと、またいつでもおいで」
「はいっ…また来ます!」
心が前を向いてる。
またダメになっても聞いてくれる人がいる。
それってなんて心強いことだろう。
おかげで少し余裕ができた今、まず僕がすべき事は…ごめんなさい、やな。
毎日話し掛けてくれていたのに、自分勝手に避けてしまったから。
「もう自分の気持ちから逃げへん」
僕の決心に応えるように風がふわりと頰を撫でる。
それはそれは暖かい、春の風だった。
end
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杏子(プロフ) - ebifuraistar73さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです!また少し待たせてしまうかもしれませんが、ゆっくり更新していきますのでこれからもよろしくお願いします! (2018年3月13日 14時) (レス) id: f0bc5c27fe (このIDを非表示/違反報告)
ebifuraistar73(プロフ) - 待ってました!公開する季節、ぴったりですね。ありがとうございます。 (2018年3月13日 6時) (レス) id: 747d322e1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏子 | 作成日時:2017年9月6日 19時