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｢で、忘れてたとこの歌詞、何やった？｣
｢えとなぁ、”遠い空に映る君にも”、やって｣
｢遠い空に…｣
｢…智洋？｣
｢淳太くんみたい｣
｢え？｣
””聞こえるか？遠い空に映る君にも””
春の歌。
まるで、淳太くんが照史くんへ歌っているみたい。
あの曖昧な風は、照史くんへの春の便りなのかもしれへん。
｢あぁ…なんとなく、智洋の考えてる事わかった｣
｢んふふ、お見通し？｣
｢おん、おみとーし！｣
｢じゃあ〜、俺がさっき大毅さまに頼まれた事、何でしょう！｣
｢ん〜…いちご？…あ、とも、心隠すの卑怯やぞ｣
｢覗かんとって、えっち！｣
もう、ちゃんと意識しとかんと、崇裕には全部筒抜けや。
まぁ自分自身に隠し事っていうのもおかしな話ではあるんやけどね。
しばらくそうしてじゃれていると、トントン、誰かが部屋に訪れた。
｢はぁい？あ、照史くん！どうしたん？｣
｢着物、俺んとこ置きっぱしてたから持ってきてん｣
｢ありがとぉ。着心地はどうやった？｣
｢んも、バッチシよ！来年もよろしゅうなぁ｣
｢任せといて！…ね、照史くん、｣
｢ん？｣
｢淳太くんの事、まだ心配？｣
｢んー、心配、やけど…今は楽しみってのがおっきいかな！｣
｢そか。よかった！｣
照史くんが用事を済ませてまたふたりになった部屋に反物の擦れる音が響くと、崇裕が目を閉じた。
綺麗に収められた着物に照史くんの気遣いを感じて微笑ましい。
｢その音、好き｣
｢うん、俺も｣
｢…ん？もう夏の準備するん？｣
｢今年の夏は早く来そうやからね。それにのんくんはお着物にこだわるから、夏は気合い入れて仕立てんと！｣
｢なるほどなぁ｣
｢崇裕も手伝ってな〜｣
｢わぁってるよ。けどその前に、智洋も金平糖食べたら？｣
｢神ちゃん喜んでくれたかなぁ｣って、望が心配してたから。
そう言う崇裕にそれもそうやなって返事をして、ひとつ、薄い新緑色の金平糖を手に取った。
｢ん、あまい｣
｢ガラスやった？｣
｢ふふっ、んーん、ちゃあんとお砂糖でした｣
もうひとつ桜色を頬張って、ころりと転がす。
｢とも、にっこにこやなぁ｣
｢やって俺、一足先に春を食べちゃったんやもんっ｣
新緑色と、桜色。
これから訪れる春の色をいち早く見れた気分で、そんなことを言う。
このあまい春が、不安げな照史くんにも早く伝わりますように。
なんてのは、杞憂かな？
『照史、早くお前に綺麗な春を見せたいんよ』
『もう、心配させんで。淳太くんのあほ………待ってるね』
ーはるいちばん おわりー
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杏子(プロフ) - ebifuraistar73さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです！また少し待たせてしまうかもしれませんが、ゆっくり更新していきますのでこれからもよろしくお願いします！ (2018年3月13日 14時) (
レス) id: f0bc5c27fe (このIDを非表示/違反報告)
ebifuraistar73(プロフ) - 待ってました！公開する季節、ぴったりですね。ありがとうございます。 (2018年3月13日 6時) (レス) id: 747d322e1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏子 | 作成日時：2017年9月6日 19時
