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てっきり自室で照史くんの話を聞いてると思ったのに部屋は抜け殻。
大毅さまー？と声をあげながら居間まで戻ると、縁側の方からクスクスいたずらっ子みたいな笑い声。これは大毅さまのものや。
｢もう…かくれんぼですか？｣
｢ははっ、ごめんごめん。照史があんまり心配するもんやから、ちょっと見にきたんよ｣
戸が開け放された縁側からふわりと心地よく頬を撫でた風は確かに、昨日巡り始めたにしては暖かすぎて、どこか曖昧なような、それでいてしっかりとした意志のようなものを感じる。
それにしても、ちょっと見にきたって言う割には随分腰が重たいようで。
それならばと俺はお茶と金平糖を用意して大毅さまの隣に座った。
｢……多分、やけどさ…淳太は、楽しんでるだけなんやないかなぁ｣
赤みがかった金平糖をころころと舌先で転がしながら、ポツリと大毅さまが言う。
一段とぼーっとしてると思ってたら、淳太くんが春を急いでる理由を考えてたんか。
｢楽しんでるって…｣
｢照史がさぁ、とびっきりの冬を見せたやろ？｣
｢確かに、そうですね｣
同じように訪れる季節なんて、一度としてない。
それは照史くんら四季の力加減によるものやからであって。ほんの少し加減を違えただけで雪は必要以上に降るし、地は凍る。そして人間はそれに心底困り嘆く。
だけど果てしなく広い土地を巡るのに、全てを完璧に、だなんて不可能で。
そんな中で今年の冬は、
照史くんが巡りはじめてから、一番穏やかで美しい冬やった。
｢淳太は、照史に負けないくらい良い春にしようって、競走みたく楽しんでるんよ｣
｢それなら、今年はとびきりの春になりますね！｣
｢おん、きっとそうなるよ｣
大毅さまがそう仰るなら間違いないやろう。
なんたって大毅さまは、この世界の全てを司る大御神なんやから。
｢そや大毅さま、明日のお店は？｣
｢あー、明日も俺が出ようかな｣
そんな大御神さまは、この家の敷地内にある古書店の店主でもある。
と言うても名ばかりの店主で、いつも店番してるのは崇裕や俺やけど。
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杏子(プロフ) - ebifuraistar73さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです！また少し待たせてしまうかもしれませんが、ゆっくり更新していきますのでこれからもよろしくお願いします！ (2018年3月13日 14時) (
レス) id: f0bc5c27fe (このIDを非表示/違反報告)
ebifuraistar73(プロフ) - 待ってました！公開する季節、ぴったりですね。ありがとうございます。 (2018年3月13日 6時) (レス) id: 747d322e1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杏子 | 作成日時：2017年9月6日 19時
