雨女系歌い手は姿を消しました【utit】

#雨女系歌い手として生きた君へ ページ14

天月side





呼吸が苦しい。
くるしい。
クルシイ。
目の前にいるのはなんだ。
目の前にいるのは、俺の大切な大切な妹。
そんな彼女を俺は殺してしまった。

守るべきものを俺は失った。この手で。
そう考えると、俺は、俺は。

ナイフをAの胸にさしたまま、俺は動けなかった。

肩にぽんと手が乗った。





「帰ろう。」





まふくん、だ。
真っ白で華奢で力を入れたらポキっと折れてしまいそうなその腕が、なぜだか今は強く大きく見えた。





「俺、この行動は合ってたと思う？いくら地獄に逝くからって最愛の妹を殺すのは間違ってたかなぁ…っ、」





流しに流しまくったのにまだ涙は止まらない。
その様子をみんなは暖かく見守った。

長年つるんできたマブダチだ。
声を聞かなくても目だけ見ればわかる。

" あってたよ " って。

俺はAの遺体に手を合わせた。













































拝啓。雨女系歌い手として生きた君へ。

本格的な夏を前に暑い時期となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

貴女の存在を忘れる者は一切出てこないであろう。
それだけ皆から愛される存在でした。
俺も、みんなも、リスナーも。歌い手界を引っ張る、盛り上げる。貴女は大切な俺らの仲間でした。

天国では元気に過ごしていますか？
俺は貴女を突き落としたという人を一生許すつもりはございません。俺らと貴女を苦しめた張本人。俺がいつか天国に逝ったときには3発ほど殴らせていただきたい。

俺はこれからも歌を歌い続けます。
貴女の歌いたいという願いを受け継いで、貴女の分まで歌っていきます。
だから、ちゃんと上から見守っていてね。

末筆ながら、ご自愛のほどお祈り申し上げます。

敬具












































そっと伸ばした手。
もう2度と握られることはなかった。











































Fin.

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