2人のエースを支える君は【白布賢二郎】

35 ページ35

超タイプの子を見つけて、別に応援しようなんて思ってないけど白鳥沢のギャラリーにふらっと寄った。


先輩たちは引退のかかった試合で負けた昨日の今日でまた俺らの面倒を見に来てくれていた。



そんな先輩を押し避けて、


｢すみません。ここ、いいですか？｣


と声をかけると笑顔でどうぞと言ってくれた。





その笑顔に心臓がギュッてなって、バクバクした。

要するに一目惚れってやつ。





試合を見ながらチラチラ彼女を気にすれば、スパイクが決まる、ブロックで止めるといった単純な点取りで喜んで笑顔になっていた。

バレーにあまり詳しくないのは、見ていてすぐ分かった。




見ていて分かったことはもうひとつ。




｢！！賢二郎くん、すごいナイスサーブだぁ！｣

｢(別に、何もすごくなくね？)｣




…出会ったその日に失恋とはついてない。

この試合が終わったらまた声をかけて、あわよくば電話番号交換したりして。なんて考えていたのが馬鹿らしい。



彼女は俺の方を見てはくれないのだろうか。



｢にしても、白鳥沢のセッターあそこでレフト使うか普通？すげぇよな｣

｢(あ、見た！こっち見た！！)｣




それが自分を見ていないことくらいわかっている。
会話に出た白鳥沢のセッターが気になっているのだろう。



見てくれたのは嬉しいけれど、それが自分でない事はわかっているけれど、やはり面白くないものである。




ヤケになって聞こえるように嫌味を言うとムキになって言い返してきた。



こんな形で知ってしまった彼女の名前。


聞けばもう付き合ってるらしいし、俺らの出会いは最悪だったけど、これから希望があるかもしれない。




｢あ、おい！二口！どこ行くんだよ！？｣

｢言われた通り謝ってきま〜す｣






半泣きにさせてしまった彼女を追いかける。


出会ったその日に失恋したんだ。
少しくらいタチの悪い嘘をついて彼女に近づくことを許してほしい。

36→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す