Valentine Story『tn』 ページ7
A『…………。』
2月の夜の寒さは異常だと感じる程だ…薄着でベランダに出たのが間違いだったかもしれないと思っていたのだが、今更取りに行く気分にもなれなかった
『寒い…』そう呟くと、そのセリフを待っていたかのように自分の頭に膝掛け程度の毛布が被さる…
??『そんな薄着でベランダにおったら風邪ひくに決まっとるやろ…』
隣の家のベランダからいつもの聞き慣れた声とため息が聞こえてくる…
横を向かなくても、誰がいるのかはわかっている…
A『ん…ありがと』
渡された毛布を羽織り、ベランダの柵に手をかける…
いつもなら他愛もない話をするのだが、今日は沈黙の静かな空間であった
.
tn『それで…渡せたんか??』
トントンは心配そうな声と顔を浮かべながら様子を伺うかのような表情を向けている…
それを聞いた自分はゆっくりと首を横にふる…
A『やっぱり…渡せなかった…』
違う…
“好きな人に渡せなかった”は嘘だ…
彼には見えない反対側の手に握られているラッピングされたお菓子を握る力が少し強くなる…
A『………。』
本当に渡したいと思っている人は今まさに心配そうな顔を向けている彼である
自分は出すのをためらっていたお菓子をトントンの方へと差し出す…
A『……トントンにあげる、日頃のお礼という事で』
いないはずの偽りの好きな人の話をして、心底最低な嘘をついたと思っているし、だからと言って今更お菓子を本命という形で渡す勇気なんてもっとないような気がする
tn『Aから貰えるとは思ってなかったわ…』
その時のトントンの顔は毎年変わらず、驚いた顔を向ける
家は隣のため手渡しなんてわざわざ下に降りずともベランダで渡すことが可能である、チラッと目線を合わせると受け取っている彼の顔はとても笑顔で…優しかった
tn『今年も義理チョコありがとうな』
A『……っ!』
そんな事言わないで、本当は貴方のために作ったのだから…
義理なんかじゃない…
滲んでくる視界…耐えていたはずの涙が意思を無視するかのようにポロポロ溢れ出てくる…
tn『……A?どうしたん?』
A『…ううん、なんでもないよ!』
本当は泣いてるって気付いている癖に…
これも貴方なりの優しさだとわかっていると止めようと思っていたはずの涙がまた溢れ出てきてしまう…
.
.
〜Valentine Day〜
貴方の優しさに溺れて…
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みるくてぃー - 続編、おめでとうございます!更新、大変だと思いますが、頑張って下さい!応援してます! (2019年2月16日 1時) (レス) id: 04fa715d74 (このIDを非表示/違反報告)
綺雨-kiu- - 続編おめでとうございます!! これからも、のんびり、自分の調子で更新頑張ってください!影ながら応援させて頂きます♪ (2019年2月11日 23時) (レス) id: e5cf7f0445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:riyana | 作成日時:2019年2月11日 21時