【wrwrd!】いつか訪れる偽りの幸せを。 (ページ10)

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「もしもの話やけどな」

「たった1回だけやけど。お願いしたら何処へでも行ける力が身に付いたら、Aは何処に行ってみたいん?」

『………。』

目を閉じて次に開いた瞬間、目的地に着いているなんて…

そんな子供の夢や憧れみたいな質問を、隣に座っているであろう彼からされたのだが

いつの間にか、自分も子供の時に戻ったかのように期待や夢を膨らませながら、その解答をいつの間にか真剣に考えてしまっていた。

「もしもの話やで?…そんな深く考えなくてもええからな?」

『…それなら海、かな?』

『…一度でいいから一面が鮮やかな水色や青色のような海の景色を見てみたいなぁ…なんて』

悩み込んでしまったと心配されるほど長時間考えた答えがこれだと、残念がられてしまうのだろうかとも思ったのだが…

「めっちゃええやん!!俺も海に行ってみたい!」と嬉しそうな声の返答が来たので少し安堵をしていた。

「……なるほど海か。あっ!海って潮の匂いがするって聞いたで!」

『…え!?潮の匂い…??』

自分は、隣でとても楽しそうに話をする彼に興味津々な顔つきで話に耳を傾けるが…

…それと同時にこの他愛もない会話をしている時間がずっと続けばと願っている我儘な自分がいる。

「任せとき、いつになるか分からんけど…絶対に俺がAを海に連れてったるからな!!」

「…それまで楽しみにしといてや?」

海…正直言って自分だって確かにこの目で見た事のない景色であるが…

良く聞く話では、とても素敵で一度見たら忘れることのない鮮やかな景色だと聞いたことがある

いつかそんな世界を…彼は私を連れて見せてくれるのだろうか?

『…本当?じゃあ、私も楽しみにしてるよ』

そう口にした私は、自分の両目を覆っている包帯に少しだけ手を添え…

いつか、見えなくなってしまった世界と命の恩人である彼と会える事を信じて…

まだ私は諦めないと…そう言い聞かせて。

精一杯の笑顔を向けよう

なんてね…

やっぱり、自分の前に広がる何も見えない世界から、一面の鮮やかな世界に変わるとは中々信じきれない自分だっているよ。