【wrwrd!】いつか訪れる偽りの幸せを。 (ページ9)

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「Aさん、本日はどのような本を読んでいるのでしょうか?

『…そうですね、強いて言うならいつか行ってみたい国についての事が書かれた本ですね!』

私達は小さな机を向かい合わせになるように座り、興味を示す目線を向けた彼に本の表紙を見せるが

それ以外にも読んでもらいたい本は沢山ある為一度席を立ち本棚の方へと足を進める。

そんなに急いで立ち上がるとお身体に障ってしまいますよ。と声を振り払うように本を探す自分

この、時計の音と自分の声だけが響く小さな部屋には私が集めた沢山の夢が詰まっている。

『確か…エミさんはこの国に訪れたことがあるんですよね?良ければお話を聞いてもいいでしょうか?』

「勿論ですよ、私に答えられる範囲となってしまいますが。」

聞くには彼はこの国に住んでいるわけではなく、様々な国を転々とし旅をしている放浪者であり

その名の通り世界中を旅しているのだそうだ。

そのため貴方の語る世界の全ては

自分が今まで長年かけて読み漁って得た知識や、情報とは格が違う。

「おや…そんなに栞を取り出してどうされたのですか?」

いつかエミさんのように自分の足で訪れてみたいと、お話を聞いて改めて思ったので栞を挟んでいこうと思いまして!』

栞を挟んだ国はいつか自分が訪れてみたい国。

…いや、本音としては少し違うのかもしれない。

いつか自分もエミさんのように自由に旅が出来る様になったら一緒に訪れたい国。というのが正しい例えかもしれない。

貴方のような自由に憧れ

いつかこの薄暗い場所から飛び出し

争いのない世界を自由に生きたいと

『紅茶のおかわりご用意しますね。』

「ありがとうございます、ではお言葉に甘えていただきたく思います。」

鳥籠の中に囚われる人生なんてうんざりだ。

こんな、叶いもしない夢ばかりがつのる日々を終えられるように。

__偽りの旅人__