【wrwrd!】いつか訪れる偽りの幸せを。 (ページ8)

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「そうやAちゃん。今度のデートはどこに行こか?」

『でっ、デート!?…私達、そもそもお付き合いしてないですよね?』

隣に座る彼からの質問はいつだって心臓に悪い言葉ばかりでこちらの身は持たない。

冗談やって!と直ぐにヘラヘラといつも通り笑う彼に振り回される日々。

それともこちらの反応をみてからかって楽しんでいるのか…

「まぁまぁ、デートやないと分かってそんなに不機嫌にならんといてや。」

『そもそも不機嫌になってませんから!!』

真っ白な何もない病室の中で、こんな他愛もない会話をしている私達だが

家族のような血の繋がりだってないし、友人同士でもそもそも対等な身分同士ではないのに…

それでも、この国を支える幹部の1人である鬱さんがこの病室に毎日訪ねる理由は分からないが…

「今日もAちゃんが喜ぶ物を持ってきたから、機嫌なおしてな?」

『…………。』

彼は毎日、全く同じ花束を持ってこの場所を訪れるのだ。

今日もシワの多く入ったスーツに少し色落ちした赤のネクタイをつけ…

その手には、その身なりに似つかない程の鮮やかで明るい花束を片手に毎日欠かさずこの場所に来るのだ。

『その…いつもありがとうございます。』

「急に改まってどうしたん?俺が好きでやっとることから気にせんといてや。」

何故そんなにも切ない顔を向けているのかが今の私には分からないが

面会終了の10分前だってなんだって、仕事を投げ出しても汗だくになりながら赤の他人の為に頑張る理由を聞いても教えてはくれないが…

もしかしたら、私は貴方にとっての大切な人と面影が似ているなど深く入り込んではいけない理由があるのかもしれない。

『では、今度のデートはいつにしましょうか?』

なんて、外出許可も貰えない私が言ったら貴方よりも1番冗談をいう人になってしまうけど

貴方の埋められない穴を私と言う存在で埋められるのなら

1番の本望なのかもしれないね。

出会いというのは運命であり必然であると言う。

__偽りの出会い__