【wrwrd!】いつか訪れる偽りの幸せを。 (ページ7)

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「Aさん行くで?しっかり掴んでくれへんと、下に手紙を取りに行く羽目になってまうから。」

『任せてください。キャッチには自信がありますから!』

時期はそろそろ梅雨が終わりを告げ、夏へと向かう日々。

ここ最近は携帯などの電子機器を使用しての簡易的なメッセージのやり取りが主流となり

正直今のご時世、手紙を書く人は少なくなってしまったのではないかと思う。

「…そうやな、もし落としたら今度ケーキ奢って貰うで?」

『なっ…絶対に掴みますから!変なところに飛ばさないで下さいね?』

彼との変わらないやりとりを終え、私は道路を挟んで向かい側のマンションの窓から身体を乗り出す彼にそう告げる

因みに彼が今から此方に渡そうとしているのは、簡単に伝えるとちょっとしたメッセージが書いてある紙飛行機だ。

今時、紙飛行機でメッセージ交換だなんて…

大人の2人がこんな青春に溢れた事をしたって偶には良いのではないかと思っているが

大人になった。時代が変化した。だからこそ、疎遠になっていた手紙というものが特別に感じてしまうのかもしれない。

『あっ、オスマンさん!見てください、ちゃんとキャッチ出来ましたよ!!』

「…………。」

嬉しそうにしている自分を優しく見守るように見つめている彼。

これも何も変わらない日常。

彼が飛ばした紙飛行機は正確であり真っ直ぐで絶対に変な方向へ飛ぶことなどない

無事に彼からの紙飛行機を取れたとなると今度は、私が投げる番となる。

『オスマンさん!こちらも行きますよ!!』

「ん…いつでもええよ。そんなに勢いつけたら変なところに飛んでまうから気をつけるんやで?」

勢いをつけて自分の飛ばした紙飛行機は空を舞い、もうすぐ夏が始まる。

この短くて長い夏が終わるまでに、あと何回貴方にこの手紙が送れるのかは分からないが。

貴方の元にこの手紙が届くように。

今日も、夏の空を舞う手紙に言葉をのせて。

__偽りの言葉__