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『…早朝から騒がしくてごめんね、これは城下町の買い物の足しにでもなればと思って！』
「まさかお小遣いという意味なんか？…これでも一応俺の方が年上なんやけどな。」
彼女の話通り館内は早朝の時間とは思えない程の忙しなさと、緊張感が漂っている。
これじゃ、普段の仕事である外交の時のような感覚と同じだ。
緊張感が漂うのも無理はない。
戦争を行えばお互い命を奪いあう者が目の前に座って話しているんやからな。
静寂かつ円滑に行われる様は正気の沙汰とは思えない光景だ。
『よしそれじゃ、一仕事してくるね書記長さん！帰って来たら城下町のお話色々聞かせてね！』
「………特に変わらんけどな、君の好きなケーキは買い忘れんようにするわ。」
違う
待ってやA
__大きく手を振る彼女は
よく見るいつも通りの明るさと笑顔だ。
それはまるで無邪気な子供が親や友人に手を振るような…
今から、一歩間違えれば命も狙われかねない話し合いが行われる場所へ行く人とはとても気が付かない。
やっぱりその話し合いに
俺も参加させてくれへんか。
__今からでも、そう口にしようと思い
背を向ける彼女の手を掴もうと思い手を伸ばしたが。
虚しくも握った手の先には彼女の腕はなく。
情けなくも空気を掴んでしまったようだ。
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「…ショートケーキを2つで。」
__彼女の背を追いかける勇気は自分にはなかった。
相手から見れば、敵国の幹部.総統の右腕が何の話も無しに話し合いに参加していたらこれこそ宣戦布告や火種の撒く理由になるかもしれへん。
今まで、この肩書きに苦しめられたことなどは何一つなく寧ろその名があるから救われた事も多かったが…
「私が書類作業に嫌気がさした時、お前はいつもここのケーキを買っては届けに来ていたな。」
「…………。」
先程から気配は感じていた。
それは黒のこの国総べてを背負った者の
絶対的な存在感と消える事のない好奇心が。
そして。
「ここのショートケーキは…」
「私の友人の大好物だ。」
俺に初めて仇となる名を
そして命をかけて共に戦う1番の仲間だ。
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