【wrwrd!】機械的で不器用な一夏を。【tn】 (ページ4)

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昨日と同じ、夕暮れの時間帯。
心地の良い波の音と潮の匂いが波風に乗り、暖かい空気が身体に触れる。

"『ね！兵士さん！明日もこの時間にこの海に集合ね！』"

別荘へ戻る際に彼女から言われた言葉を聞き
海辺へもう一度来る事になったものの、周りを見回しても彼女の姿はまだ見えないようだ。

ふと、砂浜を見ると綺麗な貝殻が幾つかあり
普段は仕事や作業に追われ下を見る暇などもなかったんだなと苦笑をしていたが…
誰かに勢いよく突進された感覚で自身を振り返る時間は終わりを告げた。

『兵士さん！お待たせ！今日は寝てないんだね。』

「…とんでもない登場の仕方やな、普通に現れる事はできへんのか。」

えへへ、驚かせてごめんなさい！あ、そうだ。
そう話すと、慌ただしい彼女は早々と謝るなり洋服のポケットから自分に見せないように何かを手の中に入れて、ん！と差し出した。

なるほど。所謂右と左の手の中のどちらに物が入っているか当てろと言う事だな。

「……あー…右やな。」

『なんと！正解だよ凄い！！』

エスパーだ！そう目を輝かす彼女が手を開くと
そこには、自分が先ほど見つけた貝殻と同じようなどれも磨かれたぐらいに美しい貝殻が3つあった。

『はい！兵士さんにプレゼント！』

「……そないな綺麗な貝殻、俺に渡すほど親しい仲やないやろ。」

彼女とは所詮は1ヶ月の関係。
戦争を行う世の中の幹部と中枢を担う者として
心残りや想い出・感情移入する事は作りたくない。

『だって兵士さん、ここに来てからずっと戦っている時のように険しい顔してるからさ。』

『グルッペンの友人とここの家主としては、この1ヶ月しっかり休暇してほしいからね。』

家主.グルッペンの友人。その言葉により彼女の素性と
半ば無理矢理、彼女は自分の手のひらに貝殻を乗せては

そそくさと靴と靴下を脱ぎ始める彼女の行動に自分は呆気に取られていた。

いや、1番に現状を理解するに困難を得たのはこの2つではなく…

楽しそうに海へ駆け出す彼女の脚元…
それは沈む夕日を反射する金属の色。
反対の足とは違う砂を弾く音。

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彼女の片脚は

"義足"であったのだ。

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『ようこそ、兵士さん!私の名前はAです!』

『短いひと夏だけど、よろしくね!!』

その言葉と共に波風は強く吹き、彼女の長い髪を靡かせたのであった。

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