・一夏 ページ1
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「…全く。何でこんな事に。」
「ほんまにあの総統…1ヶ月後覚えときぃや。」
真夏の日差しと頬をつたう汗
自身の目の前に佇むのは重く閉ざされた別荘の扉。
1人で無理やり開けて弁償にでもなったら勘弁な程の重厚感のある扉だ。
簡易的ではあるが荷物や服を詰めた鞄を置き。
ゆっくりと息を吐き扉へノックを入れると、
重厚感漂う扉が開き、２名の執事がこちらへと歩いてきたのだ。
「トントン様、大変お待ちしておりました。」
「お荷物お預かりいたします、どうぞこちらへ。」
客人の接待はいつも自分が行う役割であったから、
違和感…いやこそばゆい感覚と言うべきなのだろうか。
「申し訳ない、そんなに重い荷物ではないんで。」
「改めてやが、うちの仲間がいつもお世話になっております。本当にありがとうございます。」
近くには大きな海とちょっとした森林地…
ここは正に心身ともに休めるにはうってつけと言うべき別荘地。
また、自国の戦争による大きな怪我や負傷を負った兵士らが長期療養のためにお世話になっている総統の友人の別荘でもある。
「いえいえ。こちらの3階の部屋がトントン様のお部屋になります。」
「お夕食までは2時間ほどお時間ありますので、先ずはお部屋でゆっくりおくつろぎ下さい」
広い廊下を案内されるがまま着いて行き
自身が1ヶ月お世話になる部屋とのご対面となったが
とても1人部屋とは思えない程の広さだ…
「ええ、グルッペン様から1番大きくくつろげる部屋をお願いするとお話を頂いておりますので」
負けや負け。この部屋は広すぎる…1人で使うのは申し訳ないと口にするのは既に読まれていたという事やな。
__ホンマに敵わんわ。
執事が部屋を後にし、慣れない広々とした部屋に
ソワソワとする気持ちを抑える事が出来ず、全くくつろげる気配はなさそうだ。
夕食まで後2時間…
外からは波の音が微かに聞こえる。
「…海、か。」
最後に私用で海に訪れた日は思い出せない
歳を重ねたからとは考えたくもないが
それ程、ご無沙汰であったと言う事ではあるのだが。
この時間にもなればお昼程の暑さもない、
これから2時間何もしないのも勿体無いと感じ部屋を後にすると決断をするのはあっという間であった。
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