3JSBの末っ子ちゃん ⑤ (ページ10)

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本当の気持ち ① ページ10

《岩田side》

Aと別れてからいろんなことがあった。

橋本理沙の件もまだ片付いてないし

俺自身の気持ちの整理も何もついてない。

HiGH＆LOWプロジェクトの始動で

仕事は以前よりも忙しさを増した。

Aとの撮影が多いのは

純粋に嬉しかったけど。

撮影も始まってもう1ヵ月が経とうとしてた。

今回、結構なアクションシーンが含まれてるから

入念に練習してリハでも満足いくまで確認。

乱闘シーンは、必ずAもいるし

セットもほとんど本物を用意してるから

集中してないと怪我しちまうし。

Aも監督さんと結構話し込んでて

いつだって真剣。

まずは俺とAの2人のシーン撮影から。

コ『おい待て』

『んだよ』

コ『……お前はここにいろ』

『……あ？』

コ『今回は危なすぎる』

『…………』

コ『俺らだけでじゅうぶ』『ざけんな』

コ『…………』

『あたしだって山王連合会の一員なんだよ』

コ『…………』

『……イトカンがやられて

黙ってられっか』

コ『…………』

『あそこには思い出がたくさんつまってんだよ

兄貴との思い出も、ムゲンとの思い出も

山王連合会との思い出も。

……もちろん、コブラとの思い出もだ。』

コ『お前……』

『……止めてんじゃねーよ、ばぁか』

…………。

監｢はいカットー！オッケー！｣

チェック入りまーす。なんて言葉に

きりっとしてた表情を

すぐに崩すAは、役者としてほんと凄いと思う。

真反対だももんな、いつものAとは。

そしてまたすぐにもうすぐで行われる

アクションシーンの確認をするA。

すぐ近くにある撮影現場に移動する俺とA。

｢……岩ちゃん喉大丈夫？｣

岩｢ん？｣

｢ほら、この役で低い声出してるでしょ？

しんどくないかなって｣

岩｢大丈夫！さんきゅーな｣

｢あ、これ一応持ってて！

喉のケアもしとかないとね！｣

なんてAがいつも持ち歩いてるのど飴を

そのまま俺にくれた。

本当に優しいんだこいつ。

あんなことがあっても

俺のこと見てくれてて気つかってくれてて

いい状態でいさせてくれようとする。

だから余計に忘れられねぇし、

なんなら前よりも好きになってってる。

でも、こんな俺がAを思う資格なんて

もうねぇんだってそう思ってる。