８６杯目【 過去編 】 ページ36
ちょうど近くにあるアキくんの店。話を聞いてもらおうと扉の取っ手に手をかけると、後ろからふっかに大声で名前を呼ばれた。
深【 よかった、】
深【 Aちゃん、あのね… 】
ゆっくり近づいてくるふっかから、逃げることが出来ない。今から何を聞かされるの？言い訳？そんなの聞きたくない。こっち来ないでよ、
？【 2人とも、何してるの？ 】
目をギュッと瞑って来ないでと願っていると、裏口の方面からアキくんの声。びっくりして目を開くと、手には空き瓶とゴミ袋。いつも付けてる蝶ネクタイは緩んでいて、営業中にはかけていないメガネ。もしかして、閉め作業中…？
え、なんで？ まだ閉店には早いのに…
深【 店、もう閉店なの？早くない？ 】
ふっかも私と同じことを思っていたらしい。やっぱり早いよね…
ア【 ちょっとね、野暮用で 】
深【 野暮用ね、りょーかい 】
今ので納得するの…？
高校からの付き合いだと、野暮用ってだけでも分かるのかな。
ア【 ごめんね？ せっかく来てくれたのに 】
深【 いや、大丈夫だよ 】
深【 Aちゃん、場所移動しよ？ 】
そう優しく言われるけど、今はふっかと二人きりになりたくなくて何も返さず黙る。
ア【 …なんかあったの？ 】
深【 んーさっきちょっとね 】
ア【 店、貸そうか？ 】
深【 え？ 】
ア【 閉め作業中だけど、2人ならいいよ 】
ア【 Aちゃん移動したくなさそうだし 】
ア【 まぁ俺に聞かれてもいいなら、だけどね？ 】
深【 全然、聞かれる分には問題ないけど… 】
ア【 なら決まり。ほら、中入って 】
トントン拍子に話が進んでいって、アキくんに言われるがまま、ふっかと店の中に入り、いつもの席に座る。お店に入ってからも、私はふっかと目を合わせない。
ア【 お酒は提供出来ないので、お水で我慢してね 】
深【 ありがとう、アキ 】
【 ありがとう… 】
ア【 いいよ 】
ア【 んじゃ、俺向こうで作業してくるから 】
深【 おっけー 】
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作成日時：2023年6月4日 0時
