ep.78 ページ28
本番。心を落ち着かせて撮影に挑み、監督からOKのサインが出た。その後、クランクアップとして花束を頂いて、皆さんと写真を撮って、「幼なじみは恋愛対象にならない！」の撮影は終了。
この後どこか食べに行く？なんてメンバーと話していると、ウエディングドレス姿のAが近づいてきて、俺の腕を掴んでは「こっち来て」とお怒りモード。
まぁだいたい察しはつく。
「っ、どういうこと？なんなのあれ！」
深「なんなのって言われても、そんなに怒られるようなことした覚えないよ、俺は」
「あくまで私のためって言うの？」
「そんなの…別に辰哉とだったらキスくらい、」
深「俺が嫌なの。」
「え、？」
深「キスとはいえ、ドラマの撮影でしたくなかった」
Aが怒ってる理由は、付け加えられたキスシーンを俺がしなかったこと。正確に言えば、カメラの角度的にはキスしてるように見えるけど、実際は唇じゃなくて口角のところに口付けたことに対して怒ってる。
「意味わかんない、」
深「A本番前に言ったじゃん、俺のこと好きって」
深「だから、余計にしたくなくなった。」
「したくないって、私とキスするのそんなに嫌…？」
深「そうじゃなくて、」
「じゃあなに、」
深「本気で好きだから、だよ」
深「本気でAのこと好きだから、キスした後の顔をみんなに見せたくないの」
「っ、なにそれ…」
深「独り占めしたいんだよ、Aのこと」
「…らしくないよ、そんな言葉…」
深「かもね」
深「でも本気で思ってるよ。独り占めしたいって」
「辰哉…、」
ほらその顔。俺のこと好きですって…めちゃくちゃ可愛い顔してるの気づいてないでしょ？ そういう顔を他のやつに見て欲しくないからだよ、俺がキスシーンでキスしなかったのは。
まぁそんなこと言ったら、また「らしくない」って言われるかもしれないけど、それでもいい。 らしくなくても、鈍感なAにはこのくらいストレートな方が伝わるでしょ？
深「…好き？俺のこと」
「……辰哉は？」
深「好きだよ。Aが好き。」
「…私も、大好き……っ」
深「俺と付き合ってくれる…？」
「……私、」
深「いいよ。Aがいい。」
「っ、まだ何も言ってない…」
深「Aが言いたいことくらい分かるよ」
「……ん、私も…辰哉がいい、っ」
「私でよければ、よろしくお願いしますっ、！」
誰もいない控え室
可愛い彼女とのキスは、涙で塩っぱい味がした
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作成日時：2023年9月6日 19時
