【紫】隣の席の深澤くん (ページ49)

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深澤くんから告白されて1年と少し。

冬休みも、３学期も、あんなに話してた時が嘘みたいに深澤くんと話さなくなり、いつからか「おはよう」も「バイバイ」も言わなくなった。

３年になって、話すどころか姿もあまり見なくなった頃、深澤くんと巻坂さんが付き合ったんじゃないかという噂を耳にして、少し胸がザワついたけれど、気づかないフリをしながら学校生活を送り続け、今日は待ちに待った卒業式。

式が終わって、最後の先生の話も終わり、もう帰ってもいいはずなのに、みんな名残惜しいのか未だに残っている人達がほとんどで、卒アルの後ろにメッセージを書き合ったり、友達と話したり、写真を撮ったり、泣きあったり、和気あいあいとしている。

教室を出れば廊下にもそういう人たちは沢山いて、書いてもらう友達も書く友達も居ない私はなんとなく学校内を回ろうかと人が混雑している中を歩いていく。

お世話になった先生との別れに泣いている子、告白に成功したのか初々しい空気をまとっている男女、泣いている後輩にもらい泣きしている人、最後までバカなことして騒いでいる人…

そして、たくさんの人達に囲まれて真ん中で笑っている、私の好きな人。

……相変わらず、モテモテだなぁ、

同級生、後輩と色んな人に囲まれている深澤くんは、楽しそうに笑っていて、私に気が付く様子もない。

みんな卒アルを持ってるから、きっと深澤くんにメッセージ書いてもらうために集まったんだよね…？

いいな、私も書いてもらいたい。

…なんて、わがままが過ぎるか。

私は深澤くんを囲む人達を避けながら、その場を離れようとすると、「あ、翠川さん！」と呼ぶ声が私の足を止める。

びっくりして振り向くと、そこには手をブンブン振ってこっちに走ってくる江藤くんが居た。

「…江藤くん…？びっくりした、どうしたの？」

「ごめんごめん！翠川さん見つけたから話したくなって！笑」

「あ、そうなんだ。 ……江藤くん、卒業おめでとう」

「ありがとう！翠川さんもおめでとう！で、あの翠川さんにお願いがあるんだけど…！」

「ふふ、相変わらず一気に喋るね笑ゆっくりでいいよ。」

「うん笑 ……あの、卒アル…メッセージ書いて欲しいんだっ」

「え？」

「俺も書くからさ！」

そう言って卒アルとペンを差し出してくれる江藤くん。

いいよと言って受け取るとき、その後ろに居る深澤くんと少し目があった気がした。