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『ありがとうございましたぁ〜』
深澤くんが欲しいと言った犬の置物を買いに、モールに戻ってきて雑貨屋へと足を運んだ私たち。
近くにはもう少し高めのもあったのに、深澤くんが選んだのは1000円もしないようなもので、本当にこれでいいのかな、なんて思いながら、可愛らしくラッピングされたそれを深澤くんに手渡した。
「ありがとう」
「……本当にそれで良かったの？」
「うん。これが良かったの。」
そう言って嬉しそうに笑う深澤くん。
喜んでくれて私も嬉しいけど、何か他に出来ることないかな、
“ キスしたいって言ったらしてくれんの？ ”
……、
「…ねぇ深澤くん」
「ん？」
「キス、したい…？」
「…ねぇA。さっきも言ったけど、できないのにそんなこと言っちゃダメだよ。」
「……できる、よ？」
「え？」
「……深澤くんとなら、出来る…」
嘘じゃない。きっと深澤くんが相手なら、わたしは…
「……そーゆーのは、好きな人とする時のために取っときなよ。俺みたいな奴としちゃダメ。大事にしなさい。」
好きな人、なんて…
「……深澤くんが、言わないでよ…、」
告白してないのに振られた気持ちになって、涙がこぼれた。
泣きたいわけじゃないのに、泣きたくないのに、
「…泣かないでよ、」
「っ、ないてない…」
自分で聞いたくせに、自分で自分の首絞めてる、
深澤くんがそう言うことくらい分かってたのに…
なのに、わたし…、
「…、深澤くん、」
「ん？」
「私、深澤くんのこと…」
好きになっちゃった、
そう言いたかったのに、深澤くんが手で私の口を抑えるから…
それ以上は言わないで、なんて顔するから、
また振られた気持ちになった…
いや、これはもう振られたも同然で…
せめて、ちゃんと言って振られたかった、
「……、もう帰ろっか。」
「…うん」
私の口から手を離して歩き出す深澤くん。
その日の帰り道は「バイバイ」を言うまで、お互い何も話さなかった。
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作成日時：2022年11月16日 1時
