34 ページ34
次の日は、土砂降りだった。
傘をさしながら、鞄を抱えて、ちょこちょこと濡れないように歩く。
登校時間から全く憂鬱で仕方ない。そろそろ半袖にしようかと思ってたのに。
耳にさしたイヤホンから流れる音楽も、沢山の雨粒が傘や地面に叩きつけられる音で全然聞こえてこない。
｢…はぁ｣
｢っわ！！！！、｣
｢っっっひ｣
音楽も雨音もかき消す勢いの声量が殴りかかってくるもんだから思わず飛び上がる。
傘を少し上げて隣に並んだ人を見ると、案の定京本先輩だった。
｢いやーーーーーい｣
｢…うるさいな｣
｢え？？なに？？ちょっと聞こえない｣
｢…｣
私は先輩を無視してさっさと学校への道を急いだ。
下駄箱で傘をまとめていると、追いついた京本先輩がぷんすこと効果音がつきそうな勢いで歩いてきた。
私と違って白シャツの肩や鞄が濡れている。
｢先行くとかマジなくない？｣
｢いや、別に先行ったつもりないですよ、先輩が遅すぎただけじゃないですか？｣
｢かーーー！まじで相変わらず生意気な｣
｢スベるスピードは速いくせに足は遅いんですね｣
｢マジふざけんな｣
中学の頃と変わらないやり取りに、不思議さを感じる。ここまでふざけた人の相手をしていると私もふざけた返しがいつの間にかできるようになっていた。
｢樹でもそこまで煽らねぇのよ｣
｢そうですか｣
｢お前冷たくなったね〜いや前もだけど｣
なんだか校内で並んで歩いている事に違和感を感じる。今までだったら、難しかったことだから。
｢先輩はなんか丸くなりましたね｣
この前美術室で田中くんとじゃれていたことを思い出した。
｢まあね〜ちょっとイキってたわ中学の頃は｣
｢まあ中学生ですしね〜｣
｢屋上でサボってる俺かっけーみたいなね、お前もだけどね｣
｢そんなこと思ってませんけど｣
｢まあそうだろうね｣
｢なんか懐かしい、久しぶりにサボんない？？｣
はい？？
先輩を見上げると、なんだかワクワクした子供のような表情をしていた。
それに気付いた時には、既に先輩は私の手首を掴んでずんずんと教室と反対方向に進んでいったのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春野 | 作成日時：2021年12月10日 21時
