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｢また来てよAちゃん｣
｢ご馳走様でした｣
｢頑張れ慎太郎〜じゃあね｣
慎太郎くんのお見送りで、私達は店を後にした。
｢あーAさんこっから近いっけ｣
｢えっと、待って｣
私は現在地をマップで調べる。
｢…方向音痴？｣
｢黙らっしゃい｣
調べると、ここから20分くらい。
｢じゃあ送る。｣
｢え、悪いよ｣
｢いや俺もAさんの家から近いし｣
そう言って歩き出す。
空は藍色で、うっすらと灰色の雲が散らばって漂っている。
｢あーなんか雨降りそうじゃない？｣
｢いやまだ、まだいける｣
｢はー今年も梅雨がやってくる｣
｢俺意外と好きだよ梅雨。｣
｢物好きだね｣
｢雨の音とか、傘が並ぶ光景とか、あと雨上がりに水溜まりに太陽の光が反射するのとか綺麗｣
｢…なんだか負けた気分だな」
随分と詩的な答えが返ってきて惨めな気持ちになる。
｢なんでよ｣
｢私はシャツが湿気と汗で張り付くのが嫌、暑くもないのに湿度のせいで変に汗かくでしょ？あと髪の毛も元気無くなるし、傘さしてるときは鞄が濡れちゃうの気になるし｣
｢無限に出てくるね｣
｢意外と私季節の好きなところより嫌いなところの方が沢山言えるかも｣
｢でもさ、嫌いって結局好きと近しいよ｣
｢それは私も思うかも…｣
向き合う時間は好きも嫌いも平等な場合が多い。
好きか嫌いかなんて、実は大した問題ではない場合だってある。
同じだけ感情が満たされたら、好きなのか嫌いなのかさえ、分からなくなったり。
そんなことをボヤいたら、松村くんは笑った。
｢Aさんらしいね｣
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作者名：春野 | 作成日時：2021年12月10日 21時
