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「いや冗談とか通じないタイプだろ」
からかうような、貶すような響きを持つ言葉。
それでまた上がる笑い声。
冷や汗がじんわり手のひらに滲んで、心臓がすっと冷えていく。どうしよう、どうしよう。
少し震えて黙ってると、後ろから足音が聞こえてきた。
「おっ、樹」
「、え」
振り返ると、田中くんが立っていた。
いつか見たような、笑っているけど冷めた目付き。
「お前らもうちょい絡み方考えろよ〜モテねぇぞ」
「マジうるせー笑」
「外で先輩待ってたぞ、呼んで来いって言われたからさ。」
「マジか」
「急いでたっぽいから先いってっかもよ？」
「さんきゅー」
私を一瞥して男の子達は教室を出て行った。
「暇で図書室行っても誰もいねぇからさ、探してたの〜」
「…ありがとう。課題取りに来たの」
「あーゆーのは股間蹴っときゃいいのよ」
「それは無理」
いつも通りを装いつつも、手足の震えが治まらない。上手く笑えてる自信もない。
｢…｣
そんな私に気付いたのか、田中くんは椅子を引っ張ってきて、そこに私を座らせた。
しゃがんで、ゆっくり様子を伺うように私の顔を覗き込んだ。
｢…俺も無理？｣
私は違うという意味を込めて首を横に振る。
｢なら良かった｣
そう言って、そっと私の手を細くて骨っぽい手で包んだ。
｢…あいつらモテねぇから許してあげて｣
｢許すも何も興味無いよ｣
｢さすが｣
田中くんは、さっきまでの冷たい目は何処へやら、優しく笑いかけてくれた。
｢田中くん優しいね｣
｢そりゃ女の子が困ってんだから優しくするでしょう｣
｢はは、｣
｢Aちゃん、顔に助けて吐きそうって書いてたよ｣
｢そこまで？｣
静かに差し込むオレンジの夕日に照らされて、温まってきた身体。
いつの間にか私の身体の震えは治まっていた。
それから図書室に戻って、もう人がいないからさっさと荷物を取って二宮さんに帰りますねと一言告げて図書室を出た。
着いてきてくれた田中くんはあ、と声を上げる。
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作者名：春野 | 作成日時：2021年12月10日 21時
