もしもの世界のおはなし【BANANA FISH】

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アッシュは自国の女性とは違った初々しい反応を見せる遊菜を見て、胸のあたりがギュッとした様な気がした。それがどの類の感情がもたらした事なのか…この場で考えることはしなかったが。
しかし僅かに芽生えたその違和感とは別に生まれたその感情については見知っているーーそれはちょっとした加虐心。
彼女は他にどんな表情をするのだろうか…すっかりいたずら心に火がついてしまった。
聞き取りやすい様にゆっくりと言葉を発するアッシュ。


「遊菜か…可愛らしい名前だね。君とは、もっと仲良くなりたいな。」
「んん？？ちょ、アッシュ？！」


自分の容姿をフル活用た人当たりのいい笑みを浮かべ、人を『落とす』モードに入ったアッシュを察知して英二は声を上げるがそんなのお構い無しと握っていた手を引き寄せ、その勢いのまま空いていた腕に抱きとめた。


「！！？？」


突然の出来事に固まる遊菜。
アッシュの行動に開いた口が塞がらない英二。

遊菜は流暢な英語には慣れていないが故に(これが…アメリカの挨拶…？！？！)と完全にズレた事を人知れず思う。しかし彼女は誤解していた。親しい間柄ならともかく、初対面の相手へのハグはアメリカではポピュラーではないのだ。英二は英二で純粋に連れの女性が慣れないハグをされて固まってしまっている上、女性を口説き落とさんばかりのセリフを発する友人に「何してくれちゃってんの！」と目で訴えていた。

初対面である遊菜の思考は完全には読めないが、英二の言いたいことは手に取る様に判るアッシュ。英二の狼狽えっぷりもまた面白かったらしく最後にとどめの一手を打つ。


「よろしくな。遊菜」


抱きとめていた彼女を解放すると身を屈め視線を合わせ、そして流れるような動作で未だ触れ合ったままだった自分より細く華奢な指先へ軽いリップ音をたててキスを落とす。最高のスマイルを添えることも忘れずに。


「「っ！！？」」



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