第19話 学芸会：3 ページ20
お昼のうどんをすすりながら観察した結果、相談相手として私と二人きりで話すのは彼女にとって楽しいらしい。…決して自惚れではない。
「相談があります！」
だから昼食後帰るタイミングを失っているこうして話しかけてくれるのを密かに待っていた。
「以前学芸会があるって話しましたよね」
「しましたね。まさか私に来てほしいってことですか？」
「それもそうなんですけどそれ以前の問題です！」
行く気はあったが許しが出るかは不安だったため一安心。
話す間もAさんは文房具を組み立てる手を休めなかった。(内職だ)
「台詞を覚えるために暦海くんの睡眠時間が減ってるんです！」
「またえらい…解決しにくい問題を持ち出してきましたね」
「暦海くんのやる気を応援したんですけど、習い事もあるから彼には負担が大きすぎんじゃないかと思って」
「時間が解決してくれそうなもんですけどね。それあいつには言ったんですか？」
「はい、今言ったことそのまま。そしたら「俺頑張りたいから邪魔しちゃやだ」と返されてしまいました」
流石私の息子。天邪鬼っぷりがここで発揮されている。
正直放っておけばいいと思わなくもないが彼女の心配事はこれだけではないようだ。
急に手を止めてAさんは重苦しく口を開いた。
「ずっと言えてなかったんですけど…、暦海くんは…その、恐らくほかの子よりも覚えが悪いです」
「っ…、母親の事故の後遺症、ですか」
「私はあまりこういう言葉で片付けたくないのですが…お医者さん曰く、酸欠による脳障害です。彼も幼いながらに悪いところがあるってことを自覚しています。だからこそ、あんな一生懸命覚えようとしてるんです…けど…」
彼女の手は震えていた。
軽く考えていた自分が嫌になる。
明るく振る舞うAさんにも子供にも私は甘んじていたのだ。
結局私が出来たことといえば、次に彼女が言いそうな言葉を考えそれを言わせないくらいだった。
切羽詰まった中せめてもと包んだ両手は緊張のせいか冷たい。
「もっと助けるのが早かったらとか、自分を責めるようなこと考えたらダメですよ。Aさんは私の出来なかったことをしてくれたんですから」
「あ…えっと、はい…。とわこさんって本当…なんでもお見通しですね…」
微笑む彼女の支えになりたいと思った。
だからだったのだろうか。
私にしては珍しく自信ありげにこんなことを言った。
「何とかしてみますよ。失敗しても嫌われんのは慣れてますし」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆーか@実況者厨 - 順位付きおめでとうございます。ほんとにtowacoさんの性格掴んでるなぁと思わず読みふけってしまいました。これからも応援しています！更新頑張ってください (2016年10月29日 10時) (
レス) id: b57f6b3e4c (このIDを非表示/違反報告)
おぼろ(プロフ) - スベリヒユさん» 誰かわかるかなと思っていたら即刻ばれました(笑)当たりです。がんばります、ありがとうございます。 (2016年10月10日 0時) (レス) id: c45ae40ad4 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろ(プロフ) - ユウさん» ありがとうございます！がんばっていきますのでよろしくおねがいします！ (2016年10月10日 0時) (レス) id: c45ae40ad4 (このIDを非表示/違反報告)
スベリヒユ(プロフ) - 凄く面白かったです！！「暦海」っていうのは以前生放送で子供に付けたいと言っていた名前ですかね？雰囲気もギャグも素敵です！更新楽しみにしています！とわぽん大好き(≧▽≦) (2016年10月9日 20時) (レス) id: 3b55e177ce (このIDを非表示/違反報告)
ユウ(プロフ) - めっちゃ面白いです!!towacoさん大好きなんでこういうの凄い嬉しい( *´艸`)更新頑張って下さい!! (2016年10月9日 16時) (レス) id: 63ce42142e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
